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離れた地域の植物間の生殖を妨げる新しい仕組みを解明 ~「遺伝子重複」が新たな他者認識システムを生み出す~

離れた地域の植物間の生殖を妨げる新しい仕組みを解明 ~「遺伝子重複」が新たな他者認識システムを生み出す~

2017.06.27 09:37
 

発表のポイント

  • 植物の種の存続には、適切な交雑相手との子孫を残すことが必要であり、植物は適切な交雑相手を選別するための様々な仕組みを発展させてきた。
  • 遠く離れた地域の同じ種の植物に由来する花粉を認識して拒絶する仕組みを新規に解明した。
  • 自己認識遺伝子の重複によって新しい他者認識を生み出す点が興味深い。
  • アブラナ科野菜(白菜、カブ、小松菜など)をより採種効率の良い品種に改良するような応用が期待される。
 

概要

 東北大学大学院生命科学研究科の渡辺正夫教授、高田美信技術専門職員らの研究グループは、大阪教育大学、奈良先端科学技術大学院大学、東京大学、三重大学、チューリッヒ大学(スイス)、横浜市立大学、忠南大学(韓国)との共同研究で、同じ種であるにもかかわらず、日本とトルコという離れた地域由来のアブラナ同士に生じる不和合現象(受粉・受精を妨げる反応)を支配するめしべ♀側と花粉♂側のそれぞれ他者を認識する遺伝子セットを明らかにしました。他者を認識して受粉・受精を防ぐこの仕組みは、自己花粉の認識に関わる遺伝子セットの「遺伝子重複*1」と「相互の機能喪失」によって生じたと考えられました。これらの成果は、植物の交雑を人工的に制御する分野に新しい知見を与え、アブラナ科野菜の品種改良への応用が期待できます。

 本成果は、英国時間2017年6月26日(日本時間27日)英科学誌Natureの姉妹誌「Nature Plants」(電子版)に掲載されました。本研究は文部科学省科学研究費補助金、日本学術振興会科学研究費、植物科学最先端研究拠点ネットワークの支援を受けて行われました。

 
図. 一側性不和合性の進化モデル図
アブラナ祖先種において起こった自家不和合性の自己認識遺伝子の遺伝子重複により、SUI1遺伝子とPUI1遺伝子が生み出され(図左上)、その後、トルコではSUI1遺伝子が、日本系統ではPUI1遺伝子が相互に機能を喪失したと考えられる(図右上)。自己認識遺伝子の多型性により、トルコと日本の間では本来交雑可能なはずだが、機能的なPUI1とSUI1が出会う組合せでは不和合となる。一側性不和合性を引き起こす仕組みのモデルとしては、トルコ由来花粉に付着しているPUI1が、受粉時に日本由来めしべの乳頭細胞上の受容体SUI1と結合し、そのシグナルが伝達されて花粉拒絶に至ると考えられる(図下)。
 
 
【論文題目】
題目:Duplicated pollen-pistil recognition loci control intraspecific unilateral incompatibility in Brassica rapa
 
著者:Yoshinobu Takada, Kohji Murase, Hiroko Shimosato-Asano, Takahiro Sato, Honoka Nakanishi, Keita Suwabe, Kentaro K. Shimizu, Yong Pyo Lim, Seiji Takayama, Go Suzuki, and Masao Watanabe
 
雑誌:Nature Plants (7月号)
Volume Page:Volume 3, Article Number 17096
 
 
 

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
教授 渡辺 正夫(わたなべ まさお)
電話番号: 022-217-5681
Eメール: nabe*ige.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学大学院生命科学研究科
技術専門職員 高田 美信(たかだ よしのぶ)
電話番号: 022-217-5683
Eメール: ytakada*ige.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか(たかはし さやか)
電話番号: 022-217-6193
Eメール:lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)