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【単位認定セミナー】刺胞動物ヒドロ虫類の発生遺伝学モデル動物Clytia hemisphaericaを用いた体軸形成メカニズムの解明と後生動物進化の考察

【単位認定セミナー】刺胞動物ヒドロ虫類の発生遺伝学モデル動物Clytia hemisphaericaを用いた体軸形成メカニズムの解明と後生動物進化の考察

2017.10.13 09:53
2017年10月24日(火) 18:00~19:30
講演者:百瀬 剛志博士(Dr. Tsuyoshi Momose)
ヴィルフランシュ-シュル-メール海洋観測所,発生生物学研究所
フランス国立科学研究センター
パリ ピエール&マリー キュリー大学(パリ第6大学)
 
講演タイトル:
刺胞動物ヒドロ虫類の発生遺伝学モデル動物Clytia hemisphaericaを用いた体軸形成メカニズムの解明と後生動物進化の考察
Body axis determination in a hydrozoan genetics model animal Clytia hemisphaerica.
 
 
 刺胞動物のモデル動物としては、歴史的には非常に再生能力に優れるヒドラが再生のモデルとして、また近年では特に進化発生学(比較発生学)的な観点からNematostella vectensis (汽水産のイソギンチャク)が使われることが多くなっています。刺胞動物は非常に古い動物門で、左右相称動物の共通祖先よりも古く、形態的にもライフサイクルも非常に多様で、とくに進化発生学の目的には、クラゲを作るヒドロ虫モデルをNematostellaと対照させることは非常に重要です。
 Clytia hemisphaericaはフランスVillefranche-sur-merの私たちの研究室が先導して確立したモデル動物で、現在世界中の研究室に広がりつつあります。植物的に増殖し、ほぼ不死ともいえるポリプコロニーは変異体などの株を無性的に維持、増殖させるのに便利です。またそこから出芽によって生じるクラゲは数週間にわたって毎日、明暗サイクルに応じて接合子を放出し、発生学の実験に用いることができます。MorpholinoやmRNAのマイクロインジェクションによる遺伝子機能解析はもちろん、CRISPR/Cas9による遺伝子ノックアウト法も完全に確立し、またトランスポゾンによるトランスジェニックClytia作成も動き始めました。ゲノム配列は決定済みで、近く報告の予定です。
 研究グループでは、刺胞動物の体軸形成のメカニズムの解明と左右相称動物との比較によって、後生動物の祖先において体軸がどのように獲得されたのかを明らかにするため、Clytiaの前後軸(aboral=半口側=anterior, oral=口側=posterior)の体軸決定メカニズムを明らかにしてきました。卵内に蓄えられ、局在しているWnt3(リガンド)、Frizzled1/Frizzled3(レセプター)の母性mRNAがWnt/β-cateninsシグナルを局所的に活性化し、プラヌラ幼生の前後軸(後極)を決定することを示しました。またnon-canonicalなWntシグナルであるFz/PCP経路が左右相称動物とClytiaでほぼ完全に保存されており、体軸の伸長(おそらくconvergent extention cell movementによる)と遊泳のための繊毛を備える表皮外胚葉の上皮平面内極性(PCP)を調節していることを明らかにして来ました。現在Wnt3がWnt/β-catenin経路に加えて、PCPを非対称化させるトリガーとして働く機能を持つことが明らかになりつつあります。単一のWnt3リガンドが複数のシグナル経路を活性化させることで、体軸に関係するほぼ全ての要素を首尾一貫して制御しているといえます。この節約的な発生メカニズムは後生動物の初期にどのようなイベントがあったのかを知る重要なヒントになります。
 時間的に余裕があれば、今秋ポスドク募集を開始した、幹細胞におけるDNA修復の制御機構のプロジェクトについて、またITN(国際大学院ネットワーク)として来年募集する博士課程学生(給与有 指導教官Evelyn Houliston)のsingle cell  transcripomeプロジェクトについても簡単に触れる予定です。
 
ポスター(PDF)
 
備考:単位認定セミナー(1ポイント)となります。
 
 
世話人:生命科学研究科細胞動態制御分野 倉永英里奈
連絡先 erina.kuranaga.d1*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えて下さい)