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肺MAC症原因菌が進化する仕組みを解明

肺MAC症原因菌が進化する仕組みを解明

2017.09.15 17:08
 

概要

 
 日本では肺結核の減少とは対照的にMycobacterium avium complex (以下、MAC)という系統の細菌による肺疾患、肺MAC症が増加しています。2016年の調査では、国内で10万人中15人程度の罹患率とされており、今後も患者数が増える見通しです。しかし、病原体についてのゲノム情報が不足しており、肺MAC症の効果的な治療方法は確立されていません。矢野大和 東北大学大学院生命科学研究科講師(研究開始当時:筑波大学研究員)、岩本朋忠 神戸市環境保健研究所感染症部長、丸山史人 京都大学大学院医学研究科准教授らを中心とする共同研究グループは、MACの中の1グループであるM. avium subsp. hominissuis(以下、MAH)のゲノムを初めて集団規模で比較解析しました。その結果、MAHは遺伝子を他の種から頻繁に獲得していること、さらにMAHは進化の過程で異系統間での染色体の組み換え(有性生殖)を行っていることが分かりました。これらは結核菌には見られない特徴です。加えて、日本人が感染することの多いMAHの系統は、染色体の幾つかの場所に他系統が持つものとは配列が大きく異なる対立遺伝子を保有しており、それらが染色体間を移動していることが分かりました。これらから、MAHが他の種から獲得した有用遺伝子を集団内に積極的に拡散することで地域環境に適応していることを発見しました。
 これらの基礎情報をもとに、日本のMACの病原性と生態の研究が加速し、肺MAC症の治療法や予防法の開発が進むと期待されます。
 本研究結果は9月8日、Genome Biology and Evolution 誌(電子版)に掲載されました。
 
 
 
図 MACの地域適応モデル。近縁種や種内の様々な系統の遺伝子を取り込んで適応していく。
矢印は細胞の流れ、点線はDNAの流れを意味する。
 
 
【論文の詳細】
 
表題:Population structure and local adaptation of MAC lung disease agent Mycobacterium avium subsp. hominissui
 
著者:Hirokazu Yano, Tomotada Iwamoto, Yukiko Nishiuchi, Chie Nakajima, Daria A. Starkova,
Igor Mokrousov, Olga Narvskaya, Shiomi Yoshida, Kentaro Arikawa, Noriko Nakanishi,
Ken Osaki, Ichiro Nakagawa, Manabu Ato, Yasuhiko Suzuki, and Fumito Maruyama
 
雑誌Genome Biology and Evolution
 
 
 
 

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
講師 矢野 大和(やの ひろかず)
電話番号:022-217-5682
Eメール:yano.hirokazu*ige.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)
 
(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか(たかはし さやか)
電話番号:022-217-6193
Eメール:lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)