超回路脳機能 分野
グリア機能を光で操り、こころの源を探す
脳を構成する細胞同士がどのように信号の受け渡しをしているのか、それを詳細に調べて行く先に、心の実態が見えてくると考えています。神経細胞の間では、シナプス伝達という形で、超高速な情報交換が行われています。ところが、脳をよく見てみると、神経とは異なるグリアという細胞があり、グリアのほうが、神経より数も多く容積も大きいのです。最近の私たちの研究から、グリアは神経の活動に細かく反応していることが分かりました。また、光を用いて細胞の活動を制御できる分子をグリアに発現させ、グリアを選択的に光刺激すると、神経に情報が伝わることが示されました。マウスに麻酔薬を投与すると、神経の活動はほとんど影響を受けないのに、グリアの活動が強力に抑制されるという報告もあります。麻酔によって、選択的に失われるのは何か。意識です。心のもっとも重要な機能のひとつである意識に、グリアは影響しているのかもしれないのです。神経とグリアの間でも信号のやり取りがあり、神経・グリア・代謝回路をまたぐ超回路こそが、脳内情報処理に一層の柔軟性と複雑さを生んでいるという仮説に、私たちは挑戦しています。