野生グッピーの色覚の個体差が水環境の違いによって維持されていることを解明

Heredity誌に掲載

野生グッピーの色覚の個体差が水環境の違いによって維持されていることを
解明

所属

生態システム生命科学専攻・生物多様性進化分野

名前

河田雅圭

URLhttp://meme.biology.tohoku.ac.jp/klabo-wiki/
E-mailkawata※m.tohoku.ac.jp (※をatに置き換えてください)

 観賞用の熱帯魚として人気の高いグッピーは、野生では雄の体色が個体ごとに異なっていて、野外では多様なパターンが維持されています。また、グッピーの雌はパートナーを選ぶ時に、雄のオレンジ色や黒のカラースポットの大きさや形状に選好性を示し、その選好性が集団や個体によって違いがあることが知られています。さらに、これまで色の見え方にも個体によって違いがあることが知られており、この色覚の違いが雌の雄の体色に対する好みの違いに影響しているのではないかという仮説が提唱されてきました。しかし、色覚の個体差がどのような遺伝的基盤によって生じるのか、また、どのような理由によって違いが維持されているのかについては明らかになっていませんでした。

 東北大学生命科学研究科の河田雅圭(かわたまさかど)教授と大学院生手塚あゆみ(てづかあゆみ)(現在、九州工大研究員)は、東京大学、総研大、University of East Angliaの研究グループと共同で、グッピーの原産国である南米のトリニダッド島とトバコ島の10地点の野生グッピー集団を用いて、色覚に影響する6つのオプシン遺伝子(1)の変異を調べました。その結果、緑色や赤色の見え方に関係する赤型オプシン遺伝子のうちの2つ(LWS-1,LWS-3)で、集団の間で光吸収波長の異なるオプシンをつくる遺伝子が自然選択によって頻度を増加させていることが示されました。また、その違いは水環境の違い(溶存酸素量の違いによる水の色の違い)が異なる遺伝子の有利性に関係していることがわかりました。溶存酸素量が高く、よりきれいな水環境では、より長波長の光(より赤い)を感受する遺伝子が進化し、溶存酸素量が低く植物プランクトンが繁茂している環境では、逆により波長の短い光(より緑)を感受する遺伝子が進化してきた傾向があります。場所によって異なる遺伝子が選択されていることで、全体として異なる遺伝子が維持されていることが明らかになりました。このようなオプシン遺伝子の個体の間の違いが、雄の体色を雌が選ぶときに影響していることも期待でき、今後調べる必要があります。

 今回の成果は、河川の富栄養化などによる水の色(植物プランクトンの増殖)の変化が、魚類の色の見え方かに大きな影響を与えていることを示しています。

 本研究は4月2日づけでイギリスの国際誌 Heredity(ヘレディティ) 電子版 (Nature
Publishing Group)に掲載されました。

 

(1)オプシン遺伝子,

脊椎動物では、網膜の視細胞にある視物質が特定の波長の光を吸収して反応することで、光を感じます。ヒトでは赤、青、緑の光波長を吸収する3種類の視物質があり、様々な光を感受することができます。視物質はオプシンタンパク質とレチナールからなり、オプシンタンパクのアミノ酸配列の違いがどの波長の光を吸収するかが変化します。特に脊椎動物では、吸収波長を変化させる5つのアミノ酸が知られています。グッピーでは、紫外線から青の光を吸収する3つのオプシン (SWS1, SWS2-A, SWS2-B), 緑に光りを吸収する2つのオプシン(RH2-1, RH2-2)、緑-赤を吸収する4つのオプシン (LWS-1, LWS-2,LWS-3,LWS-4)を持っています。今回の研究で、LWS-1,LWS-2,LWS-3, SWS2Bに個体間の変異があることがわかり、特にLWS-1には、吸収波長を変える180番目のアミノ酸が個体によって違っていることがわかりました。

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