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細胞内で働く安定細胞内抗体「STAND」の開発に成功 ~従来抗体がアプローチ出来なかった細胞内タンパク質の機能阻害が可能に~

細胞内で働く安定細胞内抗体「STAND」の開発に成功 ~従来抗体がアプローチ出来なかった細胞内タンパク質の機能阻害が可能に~

2020.01.20 09:00

発表のポイント

  • pH6.6でも強いネガティブチャージを持つペプチドタグの融合で細胞内抗体を安定化
  • 細胞内で凝集する不安定な抗体も安定化することにin vitroと in vivoで成功
  • 安定細胞内抗体STANDにより、神経活動の抑制や、ヒトがんの約25%に関わるrasファミリーの一つKrasの機能抑制にin vivoで成功

概要

 基礎生物学において、抗体は標的タンパク質の局在や機能解析に利用されていますが、疾患治療薬としても副作用が低く有効性の高い医薬品として世界中で利用されています。生命現象の基礎となるシグナル伝達において、タンパク質間相互作用が重要な役割を果たしています。このタンパク質間相互作用の増減によりシグナル伝達が調節されますが、タンパク質間相互作用の異常増加が疾患の発症に繋がることが分かっています。
 このタンパク質間相互作用は一般的に作用面積が広く浅いため、低分子化合物による阻害は著しく困難であるとされています。一方、抗体は標的分子の3次元構造に特異的に結合するため、タンパク質間相互作用の阻害が可能です。疾患の治療標的となり得るタンパク質間相互作用は細胞外だけでなく、細胞内にも多く存在しますが、現在の抗体は細胞内では不安定で、その使用は細胞外の標的に限定されていました。細胞内で抗体を使うことができれば、細胞内のタンパク質間相互作用の機能解明や未だ治療薬のない疾患の治療薬の開発につながりますが、細胞内の強い還元環境が抗体を不安定にするため、30年の間、汎用的な細胞内抗体の作製法の開発は成功していませんでした。そこで、御子柴克彦チームリーダー(当時 理化学研究所 脳神経科学研究センター)、樺山博之研究員(同)、はこの問題に取り組み、安定に発現する細胞内抗体の作製法の開発に成功しました。今後は細胞内タンパク分子の機能解析にとどまらず、細胞内タンパク質間相互作用を標的とした疾患治療薬開発への応用が期待されます。
 本研究成果は、東邦大学の御子柴克彦理学部特任教授(理化学研究所、上海科技大学)、日本獣医生命科学大学の樺山博之大学院特別研究生(STAND Therapeutics株式会社 代表取締役CEO、当時 理化学研究所)、自治医科大学の村松慎一特命教授、東北大学大学院生命科学研究科の福田光則教授らによるもので、英国科学雑誌『Nature Communications』(ネーチャー・コミュニケーションズ)(2020年1月17日)に掲載されました。

 

 
【図及び説明】
図1. (a) Whole IgGの模式図. (b) ScFvの模式図. (c) HeLa細胞の細胞質における従来抗体scFvの凝集
 
 
 
【論文情報】
 
雑誌名:「Nature Communications 」(2020年1月17日公開)
論文タイトル:An ultra-stable cytoplasmic antibody engineered for in vivo applications
著者:Hiroyuki Kabayama*, Makoto Takeuchi, Naoko Tokushige, Shin-ichi Muramatsu , Miyuki Kabayama, Mitsunori Fukuda, Yoshiyuki Yamada and Katsuhiko Mikoshiba.* (*:co-corresponding authors)

DOI:doi.org/10.1038/s41467-019-13654-9
 
 
 
 
 
【関連リンク】
 
 
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担当 福田 光則 (ふくだ みつのり)
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