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進化ゲノミクス分野の別所-上原学助教らの国際研究チームがHFSP Research Grantに採択 ―軟体動物の多様性から、新しい形質の進化メカニズムに迫る―

進化ゲノミクス分野の別所-上原学助教らの国際研究チームがHFSP Research Grantに採択 ―軟体動物の多様性から、新しい形質の進化メカニズムに迫る―

2026.06.24 11:00
東北大学学際科学フロンティア研究所(大学院生命科学研究科進化ゲノミクス分野 兼担)の別所-上原 学 助教を含む国際研究チームは、生物学における長年の謎の一つである「動物において全く新しい形質がどのように進化するのか」を解明するため、国際的に高く評価されているヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム(HFSP)の研究グラントを獲得しました。
本プロジェクトに対しては、3年間で総額120万ドル(日本円で約1.8億円)の助成金が提供されます。イギリス、アメリカ、日本の3カ国の研究者が結集し、軟体動物の多様性をモデルとして、進化における「新奇性(novelty)」の遺伝的起源を探索します。
 
研究の背景と目的
進化の過程で、新しい生物学的特徴がどのように生じるのかを明らかにすることが本プロジェクトの目的です。本研究では、単に「全く新しい遺伝子」が出現することだけに注目するのではなく、「遺伝子ファミリーの拡張(遺伝子が重複し、複数のコピーが作られることで、それぞれが新しい機能を獲得できるようになるプロセス)」に焦点を当てます。
 
本研究が着目する軟体動物の「創造性」
軟体動物は、カタツムリやイカ、タコなど多様な生物を含んだ動物のグループです。それらの動物は、貝殻や毒、発光、脳や光合成能力など、形態や機能が複雑なものも多く、また高い多様性を持ち合わせています。
私たちは、これらの生物が外部の要素をうまく取り込み活用することで、創造的な形質を進化させたのだと考えています。例えば、食物から得た色素やカルシウムを取り込んで形成される「貝殻」や、獲物の刺細胞(毒針)を盗んで自らの防御に転用する「ミノウミウシ」などが挙げられます。
研究チームは、「パターン認識受容体」として知られる遺伝子群の拡張が、軟体動物において「非自己」の材料を安全に認識し、統合することを可能にし、それが進化上の革新(イノベーション)の基礎となったという仮説を立てています。
 
図. 獲物の刺細胞を盗んで自らの防御に転用する「ミノウミウシ」
本プロジェクトの研究対象の一つであるミノウミウシの蛍光染色写真。ミノとよばれる背中の突起の先端に、餌であるイソギンチャクなどから取り込んだ刺胞(青色)を蓄えている。黄色は筋肉繊維を、マゼンタは繊毛や消化組織を示す。(Image credit = Dr Jessica Goodheart.)
 
 
今後の展望
本プロジェクトでは、幅広い軟体動物種を対象に、遺伝子とその機能の詳細な解析を行います。この成果は、基礎的な進化生物学を発展させるだけでなく、生物学的複雑性の起源や、生物が新たな機能を獲得するための遺伝的メカニズムに関する科学的な考え方を再構築する可能性を秘めています。
 
東北大学の別所-上原 助教は、アメリカ自然史博物館のジェシカ・グッドハート博士(本プロジェクト代表者)およびイギリス・アバディーン大学のヴィクトリア・スライト博士と共に、この国際共同研究を強力に推進します。
 
【用語解説】
•    ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム(HFSP):ライフサイエンスのフロンティアにおける革新的・最先端の研究を推進するための国際的な研究支援プログラム。独創的かつ学際的な国際共同研究に重点を置いており、採択率は極めて低く、国際的に非常に競争率の高い助成金の一つとして研究者コミュニティで広く認識されています。
 
【研究チーム構成】
•    Dr. Jessica Goodheart(アメリカ自然史博物館、米国)※研究代表者
•    Dr. Victoria Sleight(アバディーン大学、英国)
•    別所-上原 学 助教(東北大学学際科学フロンティア研究所・大学院生命科学研究科(兼担)、日本)
 
【助成金額】
•    1チームあたり年間40万米ドル(3年間合計120万米ドル)
 
プレスリリース
Aberdeen大学