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サルの脳の「浅い層」から深部へつながる神経回路を発見 ―うつ病に関わる脳領域が構成する神経回路の解明へ―

サルの脳の「浅い層」から深部へつながる神経回路を発見 ―うつ病に関わる脳領域が構成する神経回路の解明へ―

2026.09.25 11:00

【発表のポイント】

  • ウイルスベクター(注1)を用いた神経トレーシングによって、サルの前部帯状皮質(注2)の各小領域から扁桃体(注3)へ情報を送る神経回路の詳細を可視化しました。
  • 前部帯状皮質の小領域ごとに扁桃体の各領域とのつながり方が異なり、さらに前部帯状皮質の膝前部では、扁桃体へ情報を送る神経細胞が深層よりも浅層に多く存在するという特徴的な構成が見つかりました(注4)。
  • 前部帯状皮質の機能異常はうつ病との関連が報告されており、本成果は、うつ病の病態解明や将来の治療標的の検討につながります。
 

【概要】

   気分や感情の調節には、前部帯状皮質と扁桃体の機能的な連携が重要ですが、その基礎となる神経回路の詳しい構成は分かっていませんでした。
   東北大学大学院生命科学研究科の木村慧助教、筒井健一郎教授らのグループは、ウイルスベクターを用いてサルの脳内の神経回路を調べ、前部帯状皮質の小領域ごとに扁桃体の各領域とのつながり方が異なることを明らかにしました。さらに、前部帯状皮質の膝前部から扁桃体基底核に情報を送る経路では、神経細胞が深層よりも浅層に多く存在していました。脳深部への投射は一般に大脳皮質の深層に多く存在するため、この特徴的な構成は特有の機能を担う可能性があります。本成果は、気分や感情を支える脳の仕組みの理解を深め、うつ病の病態解明や将来の治療標的の検討につながることが期待されます。
   本成果は2026年9月16日付で学術誌The Journal of Neuroscienceに掲載され、同誌の注目論文紹介This Week in the Journalに選出されました。
 
 
図1. サルの脳における前部帯状皮質と扁桃体の位置を模式的に示しています。前部帯状皮質は大脳の内側面で脳梁を取り囲むように位置し、機能的に膝前部、膝下部、背側部の3つの小領域に分けられます。扁桃体は側頭葉の内側の深部に位置しています。本研究では特に前部帯状皮質の小領域から扁桃体の基底核と副基底核への神経投射を解析しました。
 
 
【用語説明】
注1. ウイルスベクター
神経細胞に感染するウイルス(アデノ随伴ウイルスなど)が細胞内に遺伝子を運ぶ性質を利用した研究用ツール。ウイルスが増殖するために必要な遺伝子を取り除き、代わりに蛍光タンパク質などの別の遺伝子を組み込んでいる。脳内に注入することで、特定の脳領域とつながる神経経路を蛍光色素で可視化できる。
 
注2. 前部帯状皮質
大脳の内側面にあり、脳梁の前方から上方を取り囲むように位置する皮質領域。情動や痛覚、認知機能に関わると考えられている。機能的には、膝前部(pregenual ACC)、膝下部(subgenual ACC)、背側部(dorsal ACC)の3つの領域に分けられ(図1)、それぞれ異なる役割を担うと考えられている。
 
注3. 扁桃体
大脳の側頭葉内側部の深部に位置する、複数の神経核から構成される脳領域。外界や体内から入る情報の重要性を評価し、恐怖や不安などに関わる情動反応や身体反応、記憶の形成に関与している。本研究では、扁桃体を構成する神経核のうち基底核と副基底核に注目した(図1)。
 
注4. 浅層・深層
大脳皮質は神経細胞の形や並び方が異なる複数の層から構成されている。本研究では、脳の表面に近い側に存在する第II・III層を浅層、白質に近い第V・VI層を深層として分類した。一般に、大脳皮質から扁桃体のような脳深部へ情報を送る神経細胞は深層に多いことが知られている。
 
 
【論文情報】
タイトル:Anterior cingulate cortex projections to the amygdala in primates: topographic and layer-specific organization underlying emotion and mood regulation
著者:木村 慧†、曽我 ゆふき†、吉野 倫太郎†、Andi Zheng、野々村 聡、Gaoge Yan、田辺 創思、中村 晋也、大原 慎也、井上 謙一、高田 昌彦*、筒井 健一郎*
†共同筆頭著者
*責任著者:東北大学大学院生命科学研究科 教授 筒井健一郎、東北大学大学院生命科学研究科 客員教授 兼 大阪大学 大学院医学系研究科・医学部 招聘教授 高田 昌彦
掲載誌:The Journal of Neuroscience
DOI:10.1523/JNEUROSCI.0671-26.2026
URL:https://www.jneurosci.org/content/46/37/e0671262026
 
 
 
関連リンク
 
 
【問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
教授  筒井健一郎
TEL: 022-217-5052
Email: tsutsui(at)tohoku.ac.jp
 
(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
高橋さやか
TEL: 022-217-6193
Email: lifsci-pr(at)grp.tohoku.ac.jp