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イネいもち病抵抗性遺伝子Pi54の起源とジャポニカイネにみられる消失

イネいもち病抵抗性遺伝子Pi54の起源とジャポニカイネにみられる消失

2018.12.11 11:00

概要

 東北大学大学院生命科学研究科の東谷篤志教授、博士課程学生の張琳らと、宮城県古川農業試験場の遠藤貴司主任研究員、中込佑介技師らの研究グループは、イネの収量に甚大な被害を及ぼす「いもち病」に対する抵抗性遺伝子Pi54がどのように進化してきたかを明らかにしました。本研究は、インディカ米の幾つかで見いだされているPi54遺伝子の起源は古く、野生イネにおいて重複進化したこと、一方、熱帯を起源とするイネが東北アジアの温帯地域に広がるにつれて、その働きが失われたことを明らかにし、地球規模での温暖化のなかでは同遺伝子の重要性が高まることを示す報告です。本研究成果は、2018年12月5日にRice誌(電子版)に掲載されました。
 
 
 
Pi54いもち病抵抗性遺伝子の起源と進化モデル
野生イネが保有していた一つの病害抵抗性遺伝子(#11)の原型遺伝子が、進化の過程において縦列重複し、新たにPi54遺伝子が生じた(赤で表記)。また#5遺伝子も重複し、#10と#5を持つ(緑)中間型の形成が推定された。その後、「日本晴型」のイネでは、#10と#5で挟まれた領域がPi54遺伝子と#11遺伝子の間にカットアンドペーストされたために、Pi54遺伝子が破壊され機能が失われた(青)。「ササニシキ型」でのイネでは、#10と#5の間の配列がカットアンドロストされたことにより(破線)、Pi54遺伝子は破壊から免れ、熱帯などで多くみられるいもち病菌に対する抵抗性遺伝子として働いている。しかしその後、「ササニシキ型」の野生イネから温帯での栽培ジャポニカ米へ展開する過程で、Pi54遺伝子上に新たな突然変異が蓄積し、その機能は失われた。したがって、栽培ジャポニカ米の多くにおいては、「日本晴型」ならびに「ササニシキ型」のいずれにおいてもPi54遺伝子の働きが失われている。
 

 

 
【論文の詳細】
表題:Divergent evolution of rice blast resistance Pi54 locus in the genus Oryza
著者:Lin Zhang, Yusuke Nakagomi, Takashi Endo, Mika Teranishi, Jun Hidema, Shusei Sato, Atsushi Higashitani
雑誌:Rice
 
 
 
 
 
 
【問い合わせ先】
<研究に関すること>
東北大学大学院生命科学研究科
担当 東谷 篤志 (ひがしたに あつし)、寺西 美佳 (てらにし みか)
E-mail:(東谷) atsushi.higashitani.e7(at)tohoku.ac.jp
               (寺西) m.tera(at)tohoku.ac.jp
 
<報道に関すること>
東北大学大学院生命科学研究科
担当 高橋 さやか (たかはし さやか)
電話番号: 022-217-6193
E-mail: lifsci-pr(at)grp.tohoku.ac.jp