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クラゲ触手の枝分かれの仕組みを明らかに

クラゲ触手の枝分かれの仕組みを明らかに

2019.03.22 13:00
生物の形づくりは、上皮シートの変形から成り、その変形には内側に位置する間充織との相互作用が重要な役割を果たします。生物には多様な形が存在し、なかでも枝分かれ構造は、上皮面の面積を増やし枝分かれ組織の機能を最大化する役割があります。哺乳類やショウジョウバエを中心に、組織が枝分かれする仕組みについて分子・発生・細胞生物学的な解析が盛んに行われていますが、他の動物での知見は乏しいのが現状です。
 
東北大学大学院生命科学研究科附属浅虫海洋生物学教育研究センターの熊野教授のグループは、刺胞動物門ヒドロ虫綱に属するエダアシクラゲ(図1)を用いて、クラゲ触手の枝分かれ構造の形成過程の記載とその仕組みについて明らかにしました。一見複雑にみえる触手の枝分かれですが、単純な枝分かれルールの繰り返しによりつくられること、Receptor tyrosine kinase(RTK)シグナルが枝の形成に必要であること、の2点において、哺乳類やショウジョウバエと共通の仕組みが利用されていることがわかりました。
 
本研究は、より詳細な研究のための基礎的な情報を提供するものであり、特に以下の2点において、今後の研究の発展が期待されるものです。一つ目は、刺胞動物であるクラゲは中胚葉を持たない二胚葉性の動物であり、間充織が存在しない状況下で、どのようにして上皮シートの変形を引き起こすのか、2つ目は、クラゲの触手枝分かれは、エダアシクラゲ科のクラゲに観察される共有派生形質として知られており、この形質が進化の過程でどのように獲得されたのか、という問題です。本研究の成果は、3月14日にZoological Letters誌に掲載されました。
 
 
図1 シャーレに着底するエダアシクラゲ
 
 
 
【論文の詳細】
 
題目:Branching pattern and morphogenesis of medusa tentacles in the jellyfish Cladonema pacificum (Hydrozoa, Cnidaria)
 
著者:Akiyo Fujiki, Shiting Hou, Ayaki Nakamoto and Gaku Kumano
 
雑誌:Zoological Letters 2019 5:12
DOI: 10.1186/s40851-019-0124-4
 
 
 
 
【問い合わせ先】
<研究に関すること>
東北大学大学院生命科学研究科附属海洋生物学教育研究センター
担当:熊野 岳(くまの がく)
電話番号:017-752-3390
E-mail:gaku.kumano.d6(at)tohoku.ac.jp