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サンゴ共生藻と刺胞動物との共生崩壊に関わる遺伝子発現の変化を解明 共生が崩壊する「白化現象」を遺伝子レベルで解析

サンゴ共生藻と刺胞動物との共生崩壊に関わる遺伝子発現の変化を解明 共生が崩壊する「白化現象」を遺伝子レベルで解析

2019.06.03 14:00

発表のポイント

  • サンゴ礁生態系は、サンゴなどの刺胞動物と、褐虫藻(かっちゅうそう)と呼ばれる単細胞藻類の細胞内共生*1によって成り立っており、共生の崩壊によりサンゴ礁が死滅する「白化現象」が大きな問題になっている。
  • 本研究では、実験室での飼育や人為的な共生状態・非共生状態の誘導が容易なモデル刺胞動物セイタカイソギンチャクを用いることで、白化の要因と考えられる高温ストレスに対して遺伝子発現量が変化する様子を、共生体がいる状態といない状態で比較解析することに成功した。
  • この結果、共生体がいる状態の時に限り、刺胞動物細胞内の「リソソーム*2」と呼ばれる細胞小器官で働く遺伝子などが重要な役割を果たす可能性を示した。
  • 本研究により、サンゴ白化現象の理解に重要な細胞生物学研究のためのゲノムレベルでの解析基盤を開発することができた。
     

概要

 東北大学大学院生命科学研究科の丸山真一朗助教らのグループは、基礎生物学研究所の皆川純教授、上野直人教授、重信秀治教授らと共同で、共生崩壊の原因と考えられている高温ストレスに対して、共生藻がいる状態といない状態のイソギンチャクとの間で、遺伝子発現量の変動パターンが大きく異なることを発見しました。これは、宿主刺胞動物の環境応答の仕組みが藻類との共生状態の影響を強く受けることを示した重要な報告です。本研究結果は、5月16日付でG3: Genes, Genomes, Genetics誌のEarly onlineとして掲載されました。
 
 
図1. 褐虫藻を共生させたモデル刺胞動物のセイタカイソギンチャクと「白化関連遺伝子」の一つであるステロール輸送体遺伝子の塩基配列の一部。
 

 

【用語説明】
 
*1 細胞内共生
サンゴなど宿主刺胞動物の内胚葉と呼ばれる組織の細胞内には褐虫藻が共生している。褐虫藻は宿主から供給される二酸化炭素を利用して光合成し、その産物である有機物を宿主へ栄養源として供給すると考えられている。
 
*2 リソソーム
一重の膜につつまれた細胞内の構造体の一つ、内部に加水分解酵素を持ち、食作用などにより細胞内に取り込まれた生体分子などを加水分解した後、細胞内に吸収したり、不要なものは排出したりする作用を持つ。

 

【論文題目】

題目:Global shifts in gene expression profiles accompanied with environmental changes in cnidarian-dinoflagellate endosymbiosis

著者:Yuu Ishii, Shinichiro Maruyama, Hiroki Takahashi, Yusuke Aihara, Takeshi Yamaguchi, Katsushi Yamaguchi, Shuji Shigenobu, Masakado Kawata, Naoto Ueno, Jun Minagawa

雑誌:G3: Genes, Genomes, Genetics
DOI: 10.1534/g3.118.201012

 

 

【問い合わせ先】
<研究に関すること>
東北大学大学院生命科学研究科
担当:助教 丸山 真一朗(まるやま しんいちろう)
電話番号:022-795-6689
E-mail:maruyama(at)tohoku.ac.jp
             
<報道に関すること>
東北大学大学院生命科学研究科
担当:高橋 さやか (たかはし さやか)
電話番号: 022-217-6193
E-mail: lifsci-pr(at)grp.tohoku.ac.jp