発表のポイント
- 日本の重要な送粉者(植物の花粉を運んで実や種を結ぶ手助けをする動物)であるマルハナバチ類の主要6種の分布変化の推定に成功した。
- 6種のうち5種が、気候変動(主に気温上昇)により分布縮小していると推定され、特に北海道でその減少が顕著に見られた。
- 分布域の広いトラマルハナバチでは、局所的な森林面積の変化によっても分布が縮小していると推定された。
- 森林でのマルハナバチ類の詳細な分布調査などを行うことで、より具体的な保全対策の立案が可能になると期待される。
- 本研究成果は、写真を用いた市民参加型調査により実現し、市民と研究者による環境保全活動の一部としても、大きな意義をもつ。
概要
マルハナバチ類(図1)は、野生植物や農作物の受粉において重要な昆虫(送粉者)ですが、世界的に減少傾向にあり、ヨーロッパや北アメリカで分布の縮小が報告されています。日本ではマルハナバチ類の過去と現在の分布データが少なく、分布変化の推定が難しいという問題がありました。東北大学大学院生命科学研究科の大野ゆかり助教(研究当時:学振特別研究員)らのグループは、山形大学学術研究院の横山潤教授とともに、写真を用いた市民参加型調査「花まるマルハナバチ国勢調査」により収集された分布データを使用して、分布と環境要因の関係から、現在と過去の分布を推定しました。その結果、日本の主要なマルハナバチ6種(トラマルハナバチ・コマルハナバチ・オオマルハナバチ・クロマルハナバチ・ミヤママルハナバチ・ヒメマルハナバチ)の分布変化の推定に成功しました。約26年間で、6種のうちコマルハナバチを除く5種が、主に気温上昇により分布縮小し、トラマルハナバチは局地的な森林面積の増加でも分布縮小していると推定されました。本研究結果は、11月12日にScientific Reports誌(電子版)に掲載されました。

図1:マルハナバチの1種のヒメマルハナバチ(撮影 峯村和夫)
【論文情報】
題目:Estimating possible bumblebee range shifts in response to climate and land cover changes
著者:Suzuki-Ohno, Y., Yokoyama, J., Nakashizuka, T., and Kawata, M.
筆頭著者情報:大野ゆかり、東北大学大学院生命科学研究科
雑誌:Scientific Reports
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東北大学大学院生命科学研究科
担当 大野 ゆかり(おおの ゆかり)
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Eメール:yukari.tohoku.univ(at)gmail.com
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電話番号:022-217-6193
Eメール:lifsci-pr(at)grp.tohoku.ac.jp
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