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植物の細胞分裂を阻害する新たな薬剤を発見 ~コケ植物から被子植物まで、多様な植物種に効果あり~

植物の細胞分裂を阻害する新たな薬剤を発見 ~コケ植物から被子植物まで、多様な植物種に効果あり~

2023.02.28 00:00

発表のポイント

  • 植物の細胞分裂を阻害する化合物を探索する新たな方法を開発し、PD-180970とPP2を見出した。
  • PD-180970は微小管の配向を壊すことで核の分離を阻害し、PP2は細胞板の形成を阻害する。
  • どちらの薬剤も多様な植物に有効であり、さまざまな研究への利用が期待される。

概要

 細胞分裂はかたち作りに不可欠であり、DNAの複製や核の分離など、さまざまなイベントを含みます。細胞分裂の各イベントを自在に制御できれば、それぞれの仕組みを探る研究に有用なだけでなく、かたち作りをコントロールする手段にもなりえます。しかし、特に植物では、各イベントを特異的に制御できるツールは非常に限られていました。
 東北大学大学院生命科学研究科の木全祐資助教や植田美那子教授らの研究グループは、名古屋大学、神奈川工科大学、中部大学、基礎生物学研究所、総合研究大学院大学、東京大学との共同研究により、モデル植物のシロイヌナズナの受精卵を用いて、細胞分裂に影響を与える化合物を探索する新たな方法を開発しました。その結果、PD-180970とPP2という2つの化合物を見出しました。詳細なライブイメージングによって、PD-180970は微小管の配向を破壊することで核の分離を阻害することを突き止めました。また、PP2は細胞を二つに分ける仕切りである細胞板の形成をブロックすることで、細胞分裂を阻害することが分かりました。さらに、網羅的なタンパク質の解析によって、これらの化合物は微小管に結合するタンパク質群(MAP70やキネシン12)を含む多様なタンパク質のリン酸化を減少させることも特定しました。また、これらの化合物は、被子植物であるキュウリや、コケ植物であるヒメツリガネゴケなど、多様な植物種で同様の効果を発揮することも明らかにしました。
 このように、多様な植物種に共通する重要な細胞分裂イベントを特異的に制御できる新規化合物を得たことで、今後、植物の細胞分裂の研究が進展するとともに、かたち作りをコントロールできるツール開発に繋がると期待されます。
 本研究成果はLife Science Alliance誌の2023年5月号に掲載されました。
 
 
図1(A)PD-180970とPP2が植物の細胞分裂を阻害する効果を示した模式図。微小管をオレンジ、核を緑色、細胞板をピンクで表している。(B)シロイヌナズナの根の細胞の像。細胞をピンク、核を緑色で蛍光標識している。それぞれの化合物の構造も示した。薬剤を投与していない根(薬剤ナシ)では、適切に細胞分裂した小さな細胞が並んでいるが、PD-180970を投与した根では、核分裂に失敗した結果、核と細胞が巨大になっている。一方、PP2を投与した根では、細胞板の形成に失敗した結果、複数の核を含む細胞が生じている。
 
 
 
【論文情報】
Yusuke Kimata, Moé Yamada, Takashi Murata, Keiko Kuwata, Ayato Sato, Takamasa Suzuki, Daisuke Kurihara, Mitsuyasu Hasebe, Tetsuya Higashiyama and Minako Ueda* (2023) Novel inhibitors of microtubule organization and phragmoplast formation in diverse plant species. Life Science Alliance
*責任著者:東北大学大学院生命科学研究科 教授 植田美那子
  筆頭著者:東北大学大学院生命科学研究科 助教 木全祐資
 
【問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
教授 植田 美那子(うえだ みなこ)
TEL: 022-795-6713
E-mail: minako.ueda.e7(at)tohoku.ac.jp