多くの動物と同様に、植物でも、父親が作った精細胞と母親が作った卵細胞が受精することで、子供である受精卵が生じます。私たちは、これまでの研究から、父親と母親のそれぞれから受精卵に持ち込まれた因子が協力することで、受精卵の非対称な分裂と、胚の適切な成長を助けていることを発見しました。具体的には、父から持ち込まれる偽キナーゼ(SSP)が、両親どちらにも由来するWRKY2転写因子を活性化します。WRKY2は、母から受精卵に持ち込まれるHDG11/12転写因子とともに、WOX8遺伝子のプロモーターに結合して転写を促進します。このWOX8の働きによって、胚発生の基盤となる上下軸(頂端-基部軸)が形成されることを見出しました。したがって、これらの父母性因子の下流で働く遺伝子を大規模に探索(トランスクリプトーム)することで、受精卵の極性化やパターン形成を制御する実働因子を網羅的に得られると考えています。

野生株と、父母因子を失わせた株の受精卵と胚
受精卵の分裂で生じた上と下の細胞にそれぞれ赤色と青色を付けています。また、欠損株の胚の輪郭は白線で強調してあります。
Ueda et al. (2017), Genes Dev 31 (6), pp617-27より改変
父母に由来する因子が協力する仕組み

参考文献
Breuninger et al. (2008), Dev Cell 14 (6), pp867-76, DOI: 10.1016/j.devcel.2008.03.008
Ueda et al. (2011), Dev Cell 20 (2), pp264-70, DOI: 10.1016/j.devcel.2011.01.009
Ueda et al. (2017), Genes Dev 31 (6), pp617-627, DOI: 10.1101/gad.292409.116