研究概要

植物の成長統御ホルモン、ストリゴラクトン信号伝達の起源

 

ストリゴラクトンは受容体D14に受容されると、D14、F-ボックスタンパク質をコードするD3/MAX2、SMXLタンパク質の3者が複合体を作ります。その結果、SMXLはD3/MAX2によりユビキチン化されて分解されます。SMXLは遺伝子発現を抑制するタンパク質であり、SMXLが分解されると、発現抑制されてた遺伝子群が発現し、ストリゴラクトンの様々な機能が発揮されます。
ストリゴラクトン受容体DWARF14遺伝子ファミリーには2種類あります。ストリゴラクトンを受容するD14とKAI2です。KAI2はコケ植物から種子植物に至るすべての陸上植物に存在しますが、D14をもつのは種子植物だけです。つまり、KAI2が祖先型であり、D14はKAI2の遺伝子重複により進化しました。

KAI2は植物が燃えた煙に含まれるカリキンという物質を受容することから、山火事後にいち早く発芽するために機能すると考えられています。しかし、山火事やカリキンには関わらす、KAI2の機能が損なわれると発芽が抑制されることから、KAI2は植物体内で作られる物質(ホルモン)を受容していると考えられています。この物質は単離されておらず、便宜的に「KL」と呼ばれています。
私たちはKLとその信号伝達系のそもそもの(祖先型の)機能を知りたいと考え、ゼニゴケを使って研究を進めています。これまでに、KL信号伝達系がゼニゴケの栄養繁殖を制御することがわかってきました。そのメカニズムを明らかにするための研究を進めています。

ストリゴラクトン受容体は種子植物にのみ存在しますが、コケ、シダなどの植物もストリゴラクトンを合成します。受容体をもたないコケやシダでどのようにストリゴラクトンが受容されるのかは「謎」とされています。私たちは、宇都宮大学の野村崇人先生との共同研究により、コケがつくるストリゴラクトンを明らかにし、Briosymbiol(BS)と名付けました。現在、コケではストリゴラクトンはアレロケミカルとして作用しており、受容体が進化したのちに植物ホルモンとしての機能を獲得したという仮説を立て、仮説を検証するための研究を進めています。

AM菌との共生は無機栄養を効率的に摂取するうえで重要です。植物(コケ植物)は4億年以上前に陸上進出した頃にはすでにAM菌との共生を行っており、共生が水中に比べて栄養分の少ない陸上での生活にとって重要であったと考えられています。私たちはAM菌共生システムの起源や進化についても研究しています。

 

 

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