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人工的に化学合成した環境汚染物質を食べてしまう細菌がいる!

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■このような細菌はどのように誕生したのでしょうか?

▷特殊な分解酵素をコードしている「新しい遺伝子」はどこから、どうやって来たのでしょうか? ▷酵素の機能はどのように進化するのでしょうか? ▷酵素の機能改変はどこまで可能なのでしょうか? ▷新規代謝能力を発揮する細胞・ゲノムとはどのようなものなのでしょうか? ▷細菌集団としての機能はどうなのでしょうか? ▷実験室内ではなく、実際の環境中ではどうなのでしょうか?・・・興味は尽きません。

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■当研究室では、環境汚染物質分解能を有する環境細菌を主な研究対象として、細菌の環境適応・機能進化機構を解明し、得られた知見を微生物の未開拓機能開発法や環境浄化へ応用することを目指しています。

これまでの研究でわかってきたこと

■これまでの私たちの有機塩素系殺虫剤 (γ-hexachlorocyclohexane) 分解細菌の研究成果をはじめ、他の様々な難分解性化合物分解に関する国内外の多くの関連研究成果から、いろいろなことがわかってきました。それら知見から推定される細菌の環境適応・進化様式を図にまとめてみました。

適応進化モデル

■まず、日常的に経験する環境変動に対しては遺伝子発現制御で適応します(①)。共存する他生物の機能を利用して適応する場合もあります(②)。過去の世代で経験した環境変動に対しては、適応のために必要な遺伝子をサイレントな状態で潜在的に持っていることがあります。この場合は、比較的起こりやすい制御系の突然変異で適応します(③)。また、外来の遺伝子を取り込んで適応することもあります(④)。さらに、より大きな環境変動に対しては、構造遺伝子の突然変異により生じた新しい機能を有する酵素(タンパク質)をコードする遺伝子で適応します(⑤)。

■③④⑤では遺伝情報(ゲノム)が変化します。②④では他生物との関係が重要となります。もちろん、これら様式の複数の組み合わせでの適応も可能です。なお、決して①が単純で簡単だ、というわけではありません。細菌も精巧で複雑な遺伝子発現制御系を有しており、まだまだ未解明な機構が存在します。それら機構や遺伝子発現ネットワークの解明も重要な研究テーマのひとつです。

■このようなことがわかりつつありますが、まだまだ「ナゾ」だらけ・・・です。そして、環境汚染物質分解細菌は微生物の環境適応・進化における「ナゾ」の解明に適した研究対象なのです。

具体的には以下のような研究を行っています

Q. 「新しい遺伝子」はどこから、どうやって来るの?

☞ 分解細菌は起源が不明な「特殊性の高い遺伝子」も利用します。しかし、これら遺伝子は「その都度」新たに生み出されているのではなく、人間が未だアクセスできない「未開拓遺伝子資源」から細菌が巧みに「取り出して」利用していると考えられる特徴を持っています。では、どこから?どうやって来たの?

▷ 鍵となる「可動性遺伝因子(プラスミドや挿入配列)」に注目して、「新しい遺伝子」の起源やナゾを解明しよう!

代謝経路

Q. 新しい酵素機能はどうやって生まれるの?

☞ わずか数アミノ酸残基の違いで活性が劇的に異なる分解酵素が存在します。

▷ このような基質特異性が「容易に」変化する酵素を使って、実際に酵素進化の過程を追跡してみよう!

立体構造

Q. 酵素機能を人為的に改変することは可能なの?

☞ 立体構造情報などを元に理論的に改変のターゲットを絞り、ランダム変異と組み合わせることで、目的の機能改変は「ある程度」可能です。そして、分解で酵素が知られていない環境汚染物質がまだまだたくさんあります。

▷ 「潜在能力」を持つ新しい酵素を見つけ出そう!また、それらを素材として、実験室進化系(in vitroin vivo)を利用して、役に立つ新しい酵素を作ってみよう!

DhaA_TCP分解

Q. 「ゲノム」って、そんなに変わりやすいの?変わって大丈夫なの?

☞ 細菌のゲノムは比較的容易に変化し、それに伴って細胞機能も変化します。そして、その変化を引き起こす個々の要因も明らかになりつつあります。

▷ ゲノム変化の要因・機構、そしてゲノム構造と新規物質代謝能との相関関係を明らかにして、細菌ゲノムの構成原理を解明しよう!

ゲノム変化

Q. 細菌は新しい分解酵素遺伝子を取り込めば分解菌になるの?

☞ 分解代謝酵素遺伝子だけが揃っていても分解細菌にはなりません。例えば、各ステップの反応を触媒する酵素の発現バランスも大切ですし、毒性の代謝産物の解毒機構も必要です。

▷ 新規代謝能力を発揮するために必要となる基本的な細胞機能を解明しよう!

スフィンゴモデル

Q. 分解細菌は実際の環境でも「単独で」汚染物質を分解しているの?

☞ これまでは「単離した」分解細菌の実験室環境での分解能の研究が中心でした。しかし、実際の環境中では非分解細菌を含む「細菌集団」として分解細菌は能力を発揮していることが明らかになりつつあります。

▷ 「細菌集団」を理解し、その構成原理を明らかにしよう!

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Q. 細菌も有性生殖するの?

☞ はい。特定の種に属する細菌株のゲノム配列を集団規模で比較することで、環境に生息している日和見病原細菌が頻繁に染色体断片を交換していることがわかってきました。

▷ 細菌にオス、メスを決める仕組みはあるのかな?病原菌が集団内で組換えによってシェアしている遺伝子ってなんだろう?見つけて感染症対策に役立てよう!

Myco_Fig

Q. 研究成果を実際の環境浄化に使えるの?

☞ 分解細菌をそのまま汚染環境に散布してもなかなか実験室での結果から期待される分解能力を発揮しません。環境が違いすぎるからです。

▷ マイクロコズム中での分解細菌の「生き様」を解明して、実際の環境浄化に役立てよう!

Microcosm

☞ また、細菌の分解遺伝子を発現する「環境汚染物質吸収・分解形質転換植物体」の作製にも取り組んでいます。

組換え植物

■などなど、さまざま「ナゾ」の解明にチャレンジしています。そして、これら「ナゾ」の解明は、微生物の未開拓機能開発や環境浄化への応用にも繋がります!

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