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ミツクリミジンコ120年ぶりの発見

ミツクリミジンコ120年ぶりの発見

2018.07.25 11:00

発表のポイント

  • 日本で新種記載されていたDaphnia mitsukuri (ミツクリミジンコ) の存在を120年ぶりに確認した。
  • 本種は1896年(明治29年)に東京帝国大学教授の石川千代松博士によって新種として記録されたが、その存在が疑問視されていた。
  • 本研究により、石川千代松博士の功績が見直されるとともに、北東アジア地域における淡水生物の生物地理や系統進化に関する研究が加速すると期待される。
 

概要  

 東北大学大学院生命科学研究科の大学院生丸岡奈津美(修士2年)と占部城太郎教授の研究チームは、1896年に日本で記載されたミジンコ(注1)Daphnia mitsukuriをおよそ120年ぶりに再発見し、日本や中国において現存していることを明らかにしました。D. mitsukuriは、1896年に東京帝国大学農学部教授の石川千代松博士により採取され、東京帝国大学理学部動物学の初代日本人教授の箕作佳吉(ミツクリ カキチ)博士に因んで命名されました。しかし、その後の分類学の歴史の中で種としての存在が疑問視され、忘れられていました。
 本研究では、千葉県印旛沼で採集されたミジンコを飼育繁殖させ、遺伝解析と詳細な形態観察を行いました。その結果、遺伝的に既知種と異なること、形態的特徴が石川千代松博士によるD. mitsukuriの記載とよく一致することが分かり、D. mitsukuriであると結論づけました。本種と同じ遺伝子型の個体は中国からも報告されていますが、他の種類に誤同定されていました。本研究は日本の動物学草創期の指導者であった石川千代松博士の功績を再発見するとともに、北東アジア地域における淡水生物の分布・分散や進化を解明する手がかりを提供すると考えられます。
 本研究の成果は、日本動物学会の国際雑誌Zoological Science10月号に掲載されますが、一足早くそのEarl view電子版ZooDiversity Webにて公開されています。
 
 
図. Daphnia mitsukuri (ミツクリミジンコ)の雌個体
 
 
 
【用語説明】
ミジンコ類...ミジンコ類はエビやカニと同じ甲殻類で、鰓脚綱枝角目に含まれる体長数ミリの動物プランクトンです。広義のミジンコ、すなわち枝角目には1000種ほどが知られていますが、狭義のミジンコDaphnia属は100種程度が記載されています。
 
 
【論文の詳細】
 
表題:Rediscovery After Almost 120 Years: Morphological and Genetic Evidence Supporting the Validity of Daphnia mitsukuri (Crustacea: Cladocera).
 
著者:Natsumi Maruoka, Hajime Ohtsuki, Wataru Makino, Jotaro Urabe
 
雑誌:Zoological Science
Volume Page:issue 35-5 (October 2018)
 
 
 
 

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
教授 占部 城太郎(うらべ じょうたろう)
電話番号:022-795-6681
E メール:urabe*m.tohokuac.jp(*を@に置き換えてください)
 
(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当:高橋 さやか(たかはし さやか)
電話番号:022-217-6193
E メール:lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)