GO TOP

Information

Research

Information

恐竜型の股関節のつくり方を解明 鍵は胚期における骨盤の反応性の進化

恐竜型の股関節のつくり方を解明 鍵は胚期における骨盤の反応性の進化

2018.10.17 11:00

発表のポイント

  • 恐竜の最も顕著な特徴の一つとして、骨盤の股関節部分に穴が開いていることが知られている。
  • 本研究では鳥類(恐竜型)や爬虫類(祖先型)の胚を用い、「体のつくり方がどのように変化して、恐竜型の股関節の穴が獲得されたのか」を明らかにした。
  • 胚発生期の関節部分には特殊な細胞群が存在し、股関節部分の穴の有無は、この細胞群に対する骨盤の反応性の違いによって生じることが示唆された。
 

概要

 東北大学大学院生命科学研究科の江川史朗博士研究員らのグループは、恐竜の最も顕著な特徴の一つである“骨盤の穴”がどのように形作られるかを明らかにしました。本研究は、胚発生期に特有の現象に着目することで恐竜の形態進化のメカニズムを明らかにした画期的な報告です。本研究結果は、10月17日にRoyal Society Open Science誌(電子版)に掲載されました。
 本研究は、文部科学省科学研究費補助金および東北大学学際高等研究教育院の支援を受けて行われました。
 

詳細な説明

 恐竜の骨盤には股関節部分(寛骨臼*1;かんこつきゅう)に穴が開いており、これは恐竜の出現時に獲得された特徴として、また運動機能上も重要な特徴として、古くから研究がされてきました。恐竜を含め全ての動物の体は、受精卵が大人になるまでのプロセスとそれを制御するメカニズム(発生メカニズム)で形作られます。本研究では、「発生メカニズムがどのように変化することで恐竜の股関節の穴が獲得されたのか」を明らかにすべく、現存する恐竜である鳥類(ダチョウ・ウズラ・ニワトリ)と祖先状態を保持している爬虫類(ヤモリ・カメ)の発生メカニズムを比較しました。
 解析の結果、まず寛骨臼の穴の有無の差は胚発生期(胎児の非常に若い時期)の骨盤がまだ軟骨でできている段階で生じることがわかりました。次に胚発生期の関節部分にのみ出現するインターゾーン*2という細胞群に着目し、爬虫類も鳥類もインターゾーンから軟骨形成を阻害するタンパク質を分泌していること、鳥類ではそのタンパク質が寛骨臼に穴を開けていることを、そして鳥類の骨盤は爬虫類の骨盤よりもインターゾーン細胞由来のタンパク質に敏感に反応して軟骨が無くなってしまうことが明らかになりました。
 以上の結果は、この骨盤の反応性の違いが股関節部分の穴の有無に関与していること、ひいてはこの骨盤の反応性が最初期の恐竜で向上し恐竜の寛骨臼に穴が獲得されたことを示唆しています。本研究は、恐竜を発生生物学的視点から解析したという点で先駆的なものであり、恐竜研究に新たな方向性を提供するものであります。
 
 本研究は、文部科学省科学研究費補助金および東北大学学際高等研究教育院によってサポートされました。
 
 
【図】
 
 
 
 
【語句説明】
*1 寛骨臼(かんこつきゅう):
骨盤のうち、大腿骨が関節している部分。哺乳類や爬虫類はソケット状だが、最初期の恐竜でこの部分に穴が獲得され、その子孫である鳥類にまでこの穴が継がれている。
 
*2 インターゾーン:
胚発生時に関節構造が形成される際、骨要素の間(本研究では骨盤と大腿骨の間)に生じる細胞群。発生現象に関わる様々なタンパク質を分泌している。
 
 
 
 
 
 
 
【論文の詳細】
 
題目:Morphogenetic mechanism of the acquisition of the dinosaur-type acetabulum
 
著者:Shiro Egawa (江川 史朗), Daisuke Saito (齋藤 大介), Gembu Abe (阿部 玄武), and Koji Tamura (田村 宏治)
 
雑誌:Royal Society Open Science
 
 

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科 
担当 江川 史朗(えがわ しろう)
E メール:egawa.shiro*gmail.com(*を@に置き換えてください)
 
(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科 広報室
担当 高橋 さやか(たかはし さやか)
電話番号:022-217-6193
E メール:lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)