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イネ穂の枝分かれ決定遺伝子APO2 同じ遺伝子セットを繰り返しコントロールして穂を形作る

イネ穂の枝分かれ決定遺伝子APO2 同じ遺伝子セットを繰り返しコントロールして穂を形作る

2022.06.13 14:00

発表のポイント

  • APO2遺伝子はイネの穂に花がつくパターンを決める主要な遺伝子です。
  • 穂の形成のさまざまな段階でAPO2がどのような遺伝子を制御するのかを網羅的に調べました。
  • APO2は穂形成のさまざまな段階で同じセットの遺伝子を直接コントロールすることを明らかにしました。
 

概要

 APO2はイネ穂に花がつくパターンを決定する主要遺伝子です。APO2が他の遺伝子の働きをコントロールする転写因子であり、穂形成のさまざまな段階をコントロールしていることは知られていましたが、どのような遺伝子を制御しているのかは知られていませんでした。東北大学大学院生命科学研究科の経塚教授らのグループは、APO2の働き方を総合的に調べ、APO2はイネ穂形成のさまざまな段階を制御するにもかかわらず、どの段階においても同じセットの遺伝子群を直接コントロールすることを明らかにしました。本研究は、植物の成長におけるパターン形成の解明における重要な成果であるだけではなく、作物の生産性の向上にも貢献する成果です。本研究結果は、5月13日のPlant Physiology誌(電子版)に掲載されました。
 
 
【詳細な説明】
 花が着いている枝をまとめて「花序」といいます。花序に花が着くパターンは種ごとに決まっています。イネの花序は一般に穂とよばれますが、枝分かれした穂の軸上に花が着き、やがて実(コメ)が実ります。
 イネでは環境条件や個体の成育段階が整うと穂形成が始まります。穂形成が始まると、まず、葉の成長が抑えられます。また、茎頂メリステムとよばれる茎の先端の組織で細胞分裂が起こり、茎頂メリステムのサイズが増加します。次に、茎頂メリステムの性質が変わり、花序メリステムとして穂の枝分かれとを分化させます。枝分かれ形成が繰り返され、穂の枝別れパターンが決まります。そして、最終的に枝に花がつきます。花になるまで枝分かれを繰り返すので、枝分かれ形成段階が長いほど枝分かれが多く、花数の多い穂が形成されます。逆に、枝分かれ形成段階が短ければ花が少ない小さな穂が形成されます。ABERRANT PANICLE ORGANIZATION2 (APO2)はイネ穂の成長パターンを決定する主要遺伝子であり、葉の成長を抑制し、茎頂メリステムのサイズを増加させ、枝別れ形成を継続させる、という3つの働きをもつことが知られています。APO2は他の遺伝子の働きをコントロールする転写因子ですが、実際にどのような遺伝子(群)をコントロールしているのかは知られておらず、APO2が3つの異なる成長段階をどのように制御するのかに関する知見はありませんでした。
 本研究では、穂形成の各ステップにおける遺伝子発現パターンをRNAシークエンス法により網羅的に解析し、また、野生型個体とAPO2の機能が欠損した変異体との遺伝子発現パターンを比較しました。さらにChipシークエンス法によりイネ全ゲノムからAPO2タンパク質が結合するゲノムDNA領域を単離し、その配列決定を行いました。これらの解析を総合し、上記3つの過程でAPO2が結合してコントロールしている遺伝子群を特定しました。その結果、APO2は同じセットの遺伝子群を繰り返しコントロールしていることが明らかになりました。
 本研究成果は、イネ穂形態形成の主要遺伝子であるAPO2が直接コントロールする遺伝子群を明らかにし、APO2が複数の形質をコントロールする仕組みの一端を明らかにしました。本研究で得られた知見は、主動遺伝子がどのように働くのかという発生・形態形成の基本的な問題における新規な知見を提供しました。また、イネ穂の形態は種子数を決定する主要な要因であり、収量に直結する形質です。したがって、本研究で明らかになったAPO2の働きかたや下流で働く遺伝子に関する知見はイネやコムギ、オオムギなどイネ科作物の品種改良に利用できる知見です。
 
【謝辞】
本研究は文部科学省科学研究費補助金(17H06475)および東北大学TUMUGスタートアップ研究費からの支援を受けて行われました。
 
【用語説明】
APO2:ABERRANT PANICLE ORGANIZATION2。陸上植物にのみ存在する遺伝子であり、シロイヌナズナLEAFYの相同遺伝子である。イネ穂形成を制御する主動遺伝子のひとつであることが知られている。 
 
転写因子:他の遺伝子の転写を制御するタンパク質で、ゲノムDNA上の特定の配列を認識し、直接結合することで、その近傍にある遺伝子の転写をを開始あるいは停止させる。 
 
【図】
 
 
 
【研究手法】
RNAシークエンス 次世代シーケンスを用いて、細胞の中のRNAの配列を解読して、ゲノム中の全遺伝子について発現量を定量する手法。
 
Chipシークエンス (Chromatin Immuno Precipitation sequencing) 転写因子と断片化したゲノムDNAとの複合体を単離し、複合体中のDNA断片の配列を決定する。これにより転写因子がゲノムDNAのどの領域と相互作用しているのかを明らかにする手法。
 
【論文題目】
Yiling Miao, Qian Xun, Teruaki Taji, Keisuke Tanaka, Naoko Yasuno, Chengqiang Ding, Junko Kyozuka. ABERRANT PANICLE ORGANIZATION2 controls multiple steps in panicle formation through common direct-target genes. Plant Physiology. 2022 
 
 
【問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
担当 経塚 淳子 (きょうづか じゅんこ)
電話番号: 022-217-6226
Eメール: junko.kyozuka.e4(at)tohoku.ac.jp  
 
(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか (たかはし さやか)
電話番号: 022-217-6193
Eメール: lifsci-pr(at)grp.tohoku.ac.jp