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難病COPA異常症の発症を抑制する遺伝子の発見 STING遺伝子の主要バリアントによる炎症抑制

難病COPA異常症の発症を抑制する遺伝子の発見 STING遺伝子の主要バリアントによる炎症抑制

2025.02.28 11:00

【発表のポイント】

  • COPA (COPI coat complex subunit alpha, Gene ID: 1314) (注1)遺伝子の変異が引き起こすCOPA異常症は、間質性肺炎および関節炎を特徴とする難治性炎症性疾患です。COPA遺伝子の変異を有しながら発症しない人が20%程度存在します。
  • COPA異常症を発症しない人は、STING (stimulator of interferon response cGAMP interactor 1, Gene ID: 340061)(注2)遺伝子の多数の主要バリアント(注3)のうちの一つであるHAQ型STINGを保有していることがわかりました。
  • 日本人のHAQ型STING保有者の割合は欧米諸国と比較して高く、日本人ではSTING依存的な炎症性疾患・神経変性疾患の発症率が低く抑えられている可能性があります。
 

【概要】

 COPA異常症は関節炎や間質性肺炎を特徴とする遺伝性疾患で治療が難しい病気です。この病気の原因は、COPA遺伝子の変異による自然免疫シグナル(STING経路)の異常な活性化ですが、COPA遺伝子の変異を持つ人でも20%近くの人は発症せず、その理由は不明でした。
 東北大学大学院生命科学研究科の小出頌悟大学院生、朽津芳彦助教、田口友彦教授らのグループは、発症しない人たちに共通する要因としてSTING遺伝子のHAQ型という特定のバリアントを見つけました。さらに、HAQ型STINGがCOPA変異による免疫応答の異常な活性化を抑えることを明らかにしました。この発見は、STINGバリアントの違いが、遺伝性疾患の発症を決定づける要因となることを明らかにした初めての報告であり、今後の炎症性疾患の治療法開発に重要な知見を提供するものです。
 本研究は2月27日に科学誌 Journal of Experimental Medicine に掲載されました。
 
 
図. STING分子は定常状態において、細胞質全体に網目状に分布する小胞体に局在する。COPA遺伝子を発現抑制すると、野生型STINGやR232H型STINGは核近傍のゴルジ体に局在変化するが、HAQ型STINGは小胞体に留まっていた。
 
 
【語句説明】
注1.    COPA
COPI coat complex subunit alpha の略。ゴルジ体から小胞体への物質輸送を担う。
 
注2.    STING
Stimulator of interferon response cGAMP interactor 1 の略。小胞体に局在する 4 回膜貫通型タンパク質であり、細胞質ゾル DNA の出現に応答して自然免疫・炎症応答を惹起します。
 
注3.    バリアント
同一種の生物集団の中に見られる遺伝子型の違い。遺伝子多型ともいう。
 
 
 
 
 
【論文情報】
Noa Simchoni, Shogo Koide, Maryel Likhite, Yoshihiko Kuchitsu, Senkottuvelan Kadirvel, Christopher S. Law1, Brett M. Elicker, Santosh Kurra, Mei-Kay Wong, Bo Yuan, Alice Grossi, Ronald M. Laxer, Stefano Volpi MD, Dilan Dissanayake, Tomohiko Taguchi, David B. Beck, Tiphanie Vogel, Anthony K. Shum. (2025) The Common HAQ STING Allele Prevents Clinical Penetrance of COPA Syndrome. Journal of Experimental Medicine
DOI:10.1084/jem.20242179
URL:https://doi.org/10.1084/jem.20242179
 
 
【関連リンク】
 
【問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
教授 田口友彦
TEL: 022-795-6676
Email: tomohiko.taguchi.b8(at)tohoku.ac.jp
 
(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
高橋さやか
TEL: 022-21/7-6193
Email: lifsci-pr(at)grp.tohoku.ac.jp
 
 
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