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高等植物の生殖を制御する3つの異なる因子を解明

高等植物の生殖を制御する3つの異なる因子を解明

2010.06.01 16:20

自家和合性・雄性不稔性、耐冷性制御因子を解明

所属:生態システム生命科学専攻・植物生殖遺伝分野
名前:渡辺正夫
URL:http://www.ige.tohoku.ac.jp/prg/watanabe/

研究概容
 高等植物の生殖反応にまつわる3つの因子(自家和合性・雄性不稔性、耐冷性)をアブラナ・シロイヌナズナ・イネを材料として明らかにし、国際誌Plant Cell Physiol., Genes Genet. Syst.に発表した。
 自家不和合性は、ダーウィンの頃から着目されていた植物特有の現象であり、基礎科学からみれば、遺伝的多様性を維持するメカニズムであり、植物における自他識別機構のモデルとして注目されている。
一方、この自家不和合性は、実際の安定的F1雑種による品種改良においても利用されている重要な形質である。今回は、自家和合性系統を遺伝学的に解析することで、自他識別を司るS遺伝子の下流因子の同定に向けた遺伝資源の評価を行った(Isokawa et al. (2010) Genes Genet. Syst. 85: 78-96.)。
 糖の代謝は、植物の生長だけでなく、生殖ステージにおいても重要である。糖代謝の鍵を握るUGPase遺伝子について、その二重変異体を作出し、成長が抑制され、雄性不稔が見られることを明らかにした(Park et al. (2010) Plant Cell Physiol. 51: 981-996.)。
 東北地方では、夏の低温によって受粉・受精が妨げられ、冷害が生じる。大きな被害が出たのでは、1993年のが記憶に新しい。そうした被害を最小限にとどめるためには、そうした夏の低温に対して、生殖ステージで耐性を持つ、耐冷性の分子機構の解明が不可欠である。その一端として、耐冷性の異なる品種「ササニシキ」、「ひとめぼれ」の形態変化、遺伝子発現変化を調査し、染色体上のどのような領域が、耐冷性に寄与しているかを明らかにした(Oda et al. (2010) Genes Genet. Syst. 85: 107-120.)。
 こうした研究を統合して、高等植物の受粉・受精反応を分子レベルで理解したい。

イネの花

アブラナの花

私たちは、この様にアブラナ科植物の自家不和合性の分子機構を研究しています。ここまで明らかにしたように、S遺伝子の実態は明らかにしましたが、S遺伝子の認識後、どの様なシグナルが雌しべの細胞内に伝達され、自己花粉管の侵入ができなくなるのか、あるいは、非自己と認識された花粉がどのようなメカニズムで、花粉管が乳頭細胞に侵入するのかという点に関しては、ほとんど明らかになっていない。こうした植物の自他識別のモデルとも言える自家不和合性の全体像を分子レベルで解明したい。また、花粉発達・花粉管伸長は、現象が博物学的に記載されているが、そこに関わる分子はほとんど解明されていない。そこで、こうした点を明らかにするために、遺伝学、植物学の基礎を持ち、分子生物学の素養を有した学生さんと一緒に研究できることを希望します。ぜひ、渡辺まで、ご連絡ください。