イネ科植物の葉鞘と葉身の比率を決定し、調節する分子機構は知られていませんでしたが、私たちは、最近、BLADE ON PETIOLE (BOP)が葉鞘の分化に不可欠であり、また、葉鞘の割合がBOPの発現量に依存することを見出しました。BOP遺伝子の解析結果からは、BOPが基部から頂端に向かう「葉鞘ファクター」として機能し、これと拮抗する「葉身ファクター」が頂端から基部方向に作用し、葉鞘ファクターと葉身ファクターのバランスが葉鞘/葉身比を決めるという可能性が示唆されました。現在は、「葉身ファクター」を単離し、その機能および葉鞘/葉身比決定の分子機構を解明することをめざして研究を進めています。また、葉鞘の比率の決定要因であるBOP遺伝子の発現レベルを決定するメカニズム、すなわち、内外の情報がBOP遺伝子の発現レベルに反映されるメカニズムを明らかにするための研究も進めています。私たちの研究から得られる成果は、葉の発生制御の理解に留まらず、拮抗する因子のバランスによる領域決定という生物の発生原理の理解につながるものです。
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