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研究

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炎症の“スイッチ”を⼊れる新たな仕組みを発⾒ ―パイリンが関与する“過剰な炎症”とヒト疾患の背景を明らかに―

炎症の“スイッチ”を⼊れる新たな仕組みを発⾒ ―パイリンが関与する“過剰な炎症”とヒト疾患の背景を明らかに―

2026.08.17 10:00

概要 

   炎症は、細菌やウイルスなどの外敵から体を守るために働く重要な防御反応です。しかし、この仕組みの制御機構に⽣まれつきの異常があると、わずかな刺激でも炎症が過剰に起こってしまう遺伝性⾃⼰炎症性疾患が引き起こされます。その代表的な病気に、⾼熱や激しい腹痛を繰り返す家族性地中海熱(FMF)<1>があります。
   京都⼤学⾼等研究院ヒト⽣物学⾼等研究拠点(WPI-ASHBi)の本⽥吉孝 特定助教、同⼤学院医学研究科 発達⼩児科学の岩⽥直也・⻘⽊茉莉⼦ ⼤学院⽣、同⼤学院医学研究科エコチル調査(JECS)京都ユニットセンターの⼋⾓⾼裕 特定教授、東北⼤学⼤学院⽣命科学研究科の朽津芳彦 助教・⽥⼝友彦 教授、愛知県医療療育総合センター発達障害研究所の永⽥浩⼀ 副所⻑(研究当時)、東京薬科⼤学⽣命科学部ゲノム情報医科学研究室の⼟⽅敦司 准教授、横浜市⽴⼤学附属病院難病ゲノム診断科の⼟⽥奈緒美助教、同⼤学⼤学院医学研究科遺伝学の松本直通 教授、同⼤学附属病院遺伝⼦診療科の宮武聡⼦ 診療教授、同⼤学附属病院⼩児科の⻄村謙⼀ 講師・伊藤秀⼀ 教授、同⼤学⼤学院医学研究科⽣化学の濱⽥恵輔助教・緒⽅⼀博 名誉教授らを中⼼とする国際共同研究チームは、原因不明の強い炎症を⽰す患者さんの遺伝⼦解析と、⼤規模ゲノムデータベースの網羅的解析を組み合わせることで、パイリン<2>というタンパク質が炎症を引き起こす“スイッチ”をどのように⼊れるのか、その新たな仕組みを明らかにしました。
   研究チームは、パイリンがCDC42<3>という別のタンパク質と作⽤し合うことで炎症スイッチが⼊ることを⾒出しました。さらに、遺伝⼦変異によってこの作⽤が異常に強まると、パイリンの働きが過剰に活性化されることで“過剰な炎症”が⽣じることを⽰しました。
   本研究により、ゲノムデータベースに登録されているものの、これまで病気との関係がはっきりしなかった多数のパイリン遺伝⼦の変異を、機能に基づいて整理した“アトラス”が整備され、迅速かつ正確な診断や患者さん⼀⼈ひとりに合わせた“精密医療(プレシジョン・メディシン)”への応⽤が期待されます。
   加えて、CDC42がパイリンの直接の制御因⼦であることが明らかになったことで、炎症の暴⾛を抑えるための新たな治療アプローチにつながる可能性も⽰されました。
   本研究成果は、互いに補完し合う2本の論⽂として、2026年8⽉7⽇にScience Immunology誌に掲載されました。
 
【図の説明】
①    Pyrin活性化はCDC42により制御される
自然免疫のセンサーであるPyrinは、病原体の侵入を感知するとCDC42と相互作用し、炎症反応を引き起こす。これにより、生体は病原体に対する防御機構を働かせる。安静時にはPyrinとCDC42の相互作用は弱いが、病原体の侵入時には両者の相互作用が強まり、Pyrinが活性化される。
②    正常状態と疾患の比較
(上段)通常、PyrinとCDC42の相互作用は弱い。病原体の侵入に反応してPyrinとCDC42が集合体(クラスター)を形成し、活性化する。
(中段)炎症関連CDC42変異体では、Pyrin-CDC42相互作用が強まりクラスター形成が促進される。
(下段)家族性地中海熱(FMF)関連Pyrin変異体では、PyrinとCDC42との相互作用が強まり、クラスター形成が促進される。
その結果、これらの疾患ではわずかな刺激でも過剰な炎症が引き起こされる。
③    Pyrin活性化メカニズム
(左)通常、病原体の侵入を感知したPyrinはCDC42と相互作用し、両者が集合体(クラスター)を形成する。さらに、そのクラスターがインフラマソームと呼ばれるタンパク質複合体の形成を促し、炎症反応を引き起こす。
(右)FMFや一部のCDC42変異では、PyrinとCDC42の相互作用が病的に強くなる。その結果、病原体の侵入がなくてもPyrin-CDC42クラスターが形成されやすくなり、わずかな刺激でも活性化が起こる状態となる。これにより、過剰な炎症が引き起こされる。
 
 
 
⽤語解説
1. 家族性地中海熱(FMF): パイリンをつくるMEFV 遺伝⼦変異により、周期的に発熱や腹膜炎(お腹の内側を覆う膜の炎症)、胸膜炎(肺の表⾯を覆う膜の炎症)などを繰り返す⾃⼰炎症性疾患。⽇本でも500⼈程度の患者さんが報告(2009年全国調査)されており、指定難病(266)に分類されている。
2. パイリン(Pyrin): インフラマソームの核となる“センサー”として働くタンパク質。異常を検知すると⾃らが集まり(=凝集し)、炎症を誘導する司令塔として機能する。
3. CDC42: 細胞の形や動きを制御する因⼦として知られていたタンパク質。今回の研究で、パイリンと相互作⽤することで炎症のスイッチを⼊れる“新たな制御スイッチ”として働くことが明らかになった。
4. インフラマソーム: 細胞内で炎症を引き起こすための“基盤”となるタンパク質の複合体。病原体を検知すると組み⽴てられ、炎症反応を⼀気に活性化する役割を果たす。
 
論⽂情報
論文名: An N-terminal CDC42 T43I variant reveals the mechanismof pyrin inflammasome activation. 
著者名: Aoki, M., Iannuzzo, A., Mertz, P., Feng, S., Iwata, N., Perugini, C., Tsuchida, N., El Masri, R., Kuchitsu, Y.,Tacine, B., Coppola, S., Shibata, H., Cescato, M., Nishitani-Isa, M., Terré, A., Kawasaki, Y., Dalmon, S.,Nishimura, K., Magnotti, F., ... Delon, J.
掲載雑誌名: Science Immunology
DOI: 10.1126/sciimmunol.aea0515
 
論文名:A genotype-first approach reveals the molecular basis of pyrin inflammasome activation.
著者名: Iwata, N., Kuchitsu, Y., Hijikata, A., Shibata, H., Nishitani-Isa, M., Aoki, M., Izawa, K., Yoshitomi, H., Takita, J., Ueno, H., Taguchi, T., Yasumi, T., & Honda, Y.
掲載雑誌名: Science Immunology
DOI: 10.1126/sciimmunol.aea0705
 
 
 
関連リンク
 
 
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