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植物の根の水分屈性には特有の小胞輸送系が関与することを証明

植物の根の水分屈性には特有の小胞輸送系が関与することを証明

2009.04.02 11:12

シロイヌナズナ水分屈性欠損突然変異体mizu-kussei2 (miz2) の突然変異原因遺伝子を同定し、解析した結果、根の水分屈性にはMIZ2を介した小胞輸送系が必須であり、その小胞輸送系は植物の発生や重力屈性に必要な小胞輸送とは異なることを明らかにしました。

植物の根の水分屈性には特有の小胞輸送系が関与することを証明

所属:生態システム生命科学専攻 宇宙環境適応生態分野
名前:高橋秀幸藤井伸治宮沢 豊
URL:http://www.ige.tohoku.ac.jp/tekio/index.htm

 水はすべての生命に不可欠です。植物は、約4億5千万年前に水中から陸地に進出したと考えられており、陸地の乾燥環境下で生活するために根を発達させて土壌中から水を取り込み、それを植物体全体に運んで生きるように進化を遂げました。吸水器官である根が、水を上手く取り込むために周囲の水分勾配を感知して水の多い方向に伸長する、水分屈性といわれる能力をもっていることを、これまでに高橋教授らは証明してきました。さらに、モデル生物であるシロイヌナズナ(アブラナ科植物)の根で水分屈性を発現させる実験系を開発し、水分屈性を欠損する突然変異体の解析から世界ではじめて水分屈性に必要な遺伝子としてmizu-kussei1(miz1) を同定しています(PNAS 104: 4724?4729、 2007)。今回、同研究グループは、新規水分屈性突然変異体miz2の解析を行い、その突然変異の原因遺伝子をつきとめました。MIZ2は小胞輸送に必要なタンパク質GNOMをコードしていました。このGNOMはこれまで植物の発生や重力屈性に必要とされる小胞輸送系に重要な役割を果たすことが知られていましたが、興味深いことにmiz2は植物体の発生や重力屈性に全く異常がない突然変異体でした。本研究により、水分屈性の発現に小胞輸送が必須であること、そしてその小胞輸送はこれまで知られていた植物の発生や重力屈性とは異なることが明らかになりました。世界中で水分屈性発現に必須な遺伝子を同定しているのは高橋教授のグループだけで、本研究成果は掲載誌Plant Physiologyにおいて「On the Inside」でもトピックスとしてハイライトされました。
 動物と違って自ら生育場所を移動することのできない植物にとって、水分屈性は陸地で乾燥を回避して生きるために重要な戦略であり、本研究成果は、乾燥条件下での生存を可能にした陸上植物の進化と戦略を理解する糸口になると期待されます。また、現在、環境・食糧問題と関連し、地球規模での水資源の有効利用が深刻になっています。植物による水利用効率を向上させて生産力をあげることは、乾燥地での作物生産や砂漠化防止のうえで極めて重要で、この研究成果は、そのための新たな技術開発につながる植物の機能と制御分子を明らかにした点でも意義深いといえます。

論文URL:http://www.plantphysiol.org/cgi/content/full/149/2/835
On the Inside: http://www.plantphysiol.org/cgi/content/full/149/2/599