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宇宙環境においてもアポトーシス(細胞死)は正常に起こる。

宇宙環境においてもアポトーシス(細胞死)は正常に起こる。

2005.09.01 16:38

所属:生態システム生命科学専攻 ゲノム継承システム分野
名前:東谷 篤志
URL:http://www.ige.tohoku.ac.jp/genome/index.htm

 宇宙環境は地球上と異なり、微小重力をはじめとする特殊な環境にあります。今後、これらの環境を積極的に利用することや火星探索など、ヒトが宇宙へ旅たつ機会が益々増えることが予想されます。一方で、粒子エネルギーが非常に大きな宇宙放射線による被曝で、遺伝子DNAへの損傷・変異の危険性が示唆されています。
 ヒトをはじめとする多細胞生物では、放射線などにより遺伝子DNAが傷ついた時に、それら損傷を修復する機構(1)と、それら損傷が激しい際にもはや修復することなく自発的な細胞死を誘導する機構(アポトーシス)(2)を保持し、傷ついた遺伝子DNAの子孫や娘細胞への継承を断ち切ります。しかしながら、環境要因や加齢などにより、これらの活性が低下した場合、傷ついた遺伝子DNAの変異が蓄積し、発ガンなどに繋がることが知られています。
 これまでの宇宙実験により、宇宙環境において生物のDNA修復活性が地上と同程度に保持されていることは、国内外の研究者らにより証明されてきましたが、アポトーシスの活性については明らかにされていませんでした。
 そこで、私たちはモデル生物の1つである線虫を用いて、宇宙環境下でもアポトーシスが正常に起こるか、2004年4月にロシアの宇宙船ソユーズを用いて、国際線虫宇宙実験(ICE-first)を宇宙航空研究開発機構(JAXA)との共同研究の体制で実施しました。この度、その実験結果を解析したところ、宇宙環境下でも地上と同様に、線虫の配偶子形成時におけるDNA損傷に依存したアポトーシス(減数分裂パキテンチェックポイント)が生じることを世界に先駆けて証明し、その成果が国際専門誌APOPTOSISの10月号に掲載されます。

線虫
Cエレガンス

宇宙環境で生じたアポトーシス
上:DIC像
下:DAPI染色像

アポトーシス検証結果 (90Kb)