GO TOP

最新情報

研究成果

最新情報

アリのコミュニケーション中枢の発見

アリのコミュニケーション中枢の発見

2006.10.01 17:52

所属:生命科学研究科 脳機能遺伝分野
名前:水波 誠
URL:http://www.biology.tohoku.ac.jp/lab-www/microbrain/

 アリの脳に、敵と遭遇した仲間からの信号解読を専門とする部位があることが、北海道大学との共同研究によりわかった。ヒトの脳には言語に関わる中枢があるが、昆虫の脳で社会生活のための「対話」に使う専門部位が見つかったのは初めて。
 これは警報フェロモンと呼ばれる化学物質の解読部位。アリのように「社会」を築いて暮らす昆虫は、放出する物質の組み合わせを使い分け、仲間に避難を促したり、攻撃を呼びかけたりしている。
 そこでこの警報フェロモンに反応する部位を、体長1cmあまりのムネアカオオアリで調べた。脳細胞に電極を刺し、2種類の警報フェロモンを嗅がせたところ、5種類の細胞が反応した。細胞は1カ所に集まっており、1種類に反応するものと双方に反応するものがあった。
 昆虫の脳に、雌雄のコミュニケーションのための性フェロモンの処理部位があることは知られていた。警報フェロモンは、それが進化した形で処理されている可能性もあったが、今回の発見部位は、むしろ食物などの匂いを感知する部位に近かった。この発見は、動物が社会性を獲得するまでの脳の進化を突き止める手がかりとなる。
 本研究成果は、英国王立協会紀要に掲載された。また、朝日新聞で報道された(平成18年10月13日夕刊)。
 Yamagata N., Nishino H. and Mizunami M. (2006). Pheromone-sensitive glomeruli in the primary olfactory center of ants. Proc.R.Soc.B. 273: 2219-2225.