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北米で猛威を振るう外来巻貝とその寄生虫の侵入プロセス解明

北米で猛威を振るう外来巻貝とその寄生虫の侵入プロセス解明

2006.10.01 17:55

所属:生命科学研究科 マクロ生態学分野
名前:三浦収、千葉聡
URL:http://www12.ocn.ne.jp/~mand/labJ.html

 ホソウミニナは日本を中心とした東アジアの主に干潟に生息する巻貝であるが、約100年前に北米に侵入したのち定着に成功し、北米の在来種を駆逐する勢いで増加している。アジア産のホソウミニナには多種の吸虫が寄生していることが知られているが、北米のホソウミニナにもアジア産と同種の吸虫が寄生している。今回、カリフォルニア大学およびスミソニアン研究所との共同研究により、ホソウミニナとそれに寄生する吸虫のアジアから北米への侵入プロセスの解明に成功した。
 従来ホソウミニナの侵入は日本からのカキの稚貝輸入が原因ではないかと疑われてきたが、ミトコンドリアDNAの塩基配列の変異を解析した結果、北米のホソウミニナはすべて宮城県の集団のタイプと一致した。宮城県からは実際に100年前に北米に向けて多量に養殖用カキ稚貝が輸出されており、今回の結果はホソウミニナがこのカキ稚貝に混じって侵入したことを裏付けた。
 一方、ホソウミニナに寄生する吸虫についても遺伝子の型が日米で一致し、日本周辺から北米に運ばれたことが示された。しかし遺伝子型の出現パターンは、吸虫がホソウミニナとは別のルートで、しかもホソウミニナよりはるかに高い頻度で北米に運ばれたことを示した。これらの吸虫は生活環のなかで鳥や魚にも寄生し、特に渡り鳥によって継続的に北米に運ばれている可能性が高く、寄生虫の寄主となるホソウミニナが北米で定着したことが、現地で寄生虫が広まる足場になったと考えられる。以上の結果は、外来種が新しい病気を広める可能性を示すひとつの例と考えられる。

本研究成果は12月19日付の米科学アカデミー紀要電子版に掲載された。また、共同通信配信の記事として、河北新報、東京新聞、中日新聞など全国の地方紙で報道されたほか、朝日新聞、読売新聞で報道された。

Miura, O., Torchin, M. E., Kuris, A. M., Hechinger, R. M., and Chiba, S. (2006) Introduced cryptic species of parasites exhibit different invasion pathways. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (DOI) 10.1073 / pnas. 0609603103.