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根が水に向かって伸びるための遺伝子を発見

根が水に向かって伸びるための遺伝子を発見

2007.03.01 17:58

根が水に向かって伸びるための遺伝子を発見-陸上植物が乾燥地で生きる知恵-

所属:生命科学研究科 宇宙環境適応生態分野
名前:小林啓恵、宮沢豊、藤井伸治、高橋秀幸
URL:http://www.ige.tohoku.ac.jp/tekio/index.htm

 水はすべての生命に不可欠である。植物は、約4億5千万年前に水中から陸地に進出したと考えられているが、陸地の乾燥環境下で生活するために根を発達させて土壌中から水を取り込み、それを植物体全体に運んで生きるように進化した。これまでに高橋教授らは、根が水を上手く取り込むために水分勾配を感知して水の多い方向に伸長する、水分屈性といわれる能力をもっていることを証明していた。動物と違って自ら生育場所を移動することのできない植物にとって、このような能力は陸地で乾燥を回避して生きるために重要である。しかし、根が水分屈性を発現させる仕組みについては未解明のままであった。今回、同研究グループは、モデル生物であるシロイヌナズナ(アブラナ科植物)の根で水分屈性を発現させる実験系を開発し、それを用いて水分屈性を完全に失った突然変異体を単離することに成功し、その突然変異の原因遺伝子をつきとめた。このMIZU-KUSSEI1 (MIZ1)と名付けられた遺伝子が働かないと、根は水分勾配の感知に失敗し、水の多い方向に伸びることができなくなる。MIZ1遺伝子は、シロイヌナズナだけでなく、イネやコケなどの陸上植物に広く存在するが、動物や藻類にはみられず、陸上植物の乾燥回避のために進化の過程で獲得された可能性が強い。
 根が水の多い方向に伸びるために働く遺伝子を明らかにしたのははじめてで、本研究成果は、乾燥条件下での生存を可能にした陸上植物の進化と戦略を理解する糸口になると期待される。また、環境・食糧問題と関連し、地球規模での水資源の有効利用が深刻になっている。植物による水利用効率を向上させて生産力をあげることは、乾燥地での作物生産や砂漠化防止のうえで極めて重要である。本研究成果は、そのための新たな技術開発につながる植物の機能と制御分子を明らかにした点でも意義深い。

 本研究成果は、3月5日付で米科学アカデミー紀要 (PNAS) 電子版に掲載され、朝日新聞夕刊・県内版、河北新報、読売新聞のほか、共同通信配信記事として、また、日経プレスレリースやExciteニュースなどのインターネットを通して、全国に報道された。
 さらに3月13日発行の米科学アカデミー紀要104巻11号では、本論文がFrom the coverおよびCommentaryで紹介された。

Kobayashi A, Takahashi A, Kakimoto Y, Miyazawa Y, Fujii N, Higashitani A, Takahashi H (2007) A gene essential for hydrotropism in roots. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS) doi: 10.1073/pnas.0609929104

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