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細胞が動き始める瞬間における蛋白複合体のライブイメージングに成功

細胞が動き始める瞬間における蛋白複合体のライブイメージングに成功

2007.05.01 17:59

所属:生命科学研究科 神経機能制御分野
名前:木田泰之、佐藤隆行、宮坂恒太、須藤麻美、小椋利彦

 私たちや多くの動植物においての複雑な3次元器官はどのように構築されるのだろうか。これまでに、木田助教や小椋教授らは生物が発生する仕組みを遺伝子発現のレベルで明らかにしてきた。細胞は、決められた遺伝子の発現によって、器官を形成する個々の細胞たちの「個性」を獲得させ、組織中の定められた位置に向かう。そのような動きをイメージングすることはできないだろうか。また、細胞がいざ動こうとするときに、細胞間にはどのようなメカニズムが存在しているのだろうか。今回、同研究グループはゼブラフィシュの初期胚を用いたin vivo live imagingを開発し、左右2列の細胞が相互挿入を経て1列になる60分間の様子と、その際の蛋白複合体の動きをイメージングすることに成功した。相互挿入における最初のステップでは、この蛋白複合体は小胞状に見え、この小胞は細胞が強く接着している側面から多く発生し、細胞質を経てゴルジ体へと回収されていた。一方、最後のステップでは、この複合体は細胞骨格に沿ったファイバー状の様子を見せた。
 この蛋白複合体は、細胞間の接着と反発を担うephrinリガンド/Eph受容体の、細胞質内への回収(エンドサイトーシス)を活性化することで、細胞間を「接着」から「反発(乖離)」へと誘導することを見出した。また、この複合体はアクチン骨格をファイバー状に重合させる活性も持つことも確認した。したがって、相互挿入の最初のステップでは、細胞間の反発を誘導することで細胞の挿入開始を導き、最後のステップでは、アクチン骨格を発達させることで細胞が定められた形態・位置を維持すると考えられた。
 このように、一つの蛋白複合体のin vivoでの様子を詳細に目視することで、細胞同士がどのようにクロストークしているのかという情報を得ることが可能である。現在、同研究グループは、2列の細胞が挿入する際の細胞移動端に90秒サイクルで集合・分散を繰り返す蛋白を発見し、更なる解析を行っている。これらの研究成果は、細胞がどのように動いているのか、蛋白が細胞内でどのように経時的に振舞うのかを生体内で目視した点で非常に興味深いもので、この後この技術が多く使用されるであろう点について意義深いものである。

本研究成果は、4月5日付で米科学アカデミー紀要 (PNAS) 電子版に掲載された。
Kida YS, Sato T, Miyasaka KY, Suto A, Ogura T.(2007). Daam1 regulates the endocytosis of EphB during the convergent extension of the zebrafish notochord. Proc Natl Acad Sci U S A. 2007 Apr 17;104(16):6708-13. Epub 2007 Apr 5.
http://www.pnas.org/cgi/content/full/104/16/6708