アサガオ重力屈性欠損突然変異体(枝垂アサガオ)を用いた解析から,植物の腋芽伸長が重力応答に依存していること,重力応答に依存した腋芽伸長機構は,従来知られていた頂芽優勢打破の機構と全く異なる新規の機構であることを証明しました.
植物の腋芽伸長を制御する新規メカニズムの解明
所属:生態システム生命科学専攻宇宙環境適応生態分野
名前:高橋秀幸,藤井伸治,宮沢 豊
URL:http://www.ige.tohoku.ac.jp/tekio/index.htm
植物の頂芽優勢は頂芽の成長が側生器官である腋芽の成長を抑制する現象で,植物の形と生産性を支配する大きな要因です.それは,固着性生物である植物にとって,成長点を空間的に高い位置へ無駄なく移動させ,そこに存在する光・二酸化炭素の効率的利用を可能にする大変重要な仕組みです.一方,植物が頂芽を物理的,機能的に失った際に,抑制されていた腋芽は直ちに頂芽として振る舞い,成長を開始し,自身の生産性を維持しようとします.また,植物は,茎を折り曲げることによっても腋芽伸長と花芽形成が誘導される(頂芽優勢を失う)ことが知られており,ナシやモモなどの植物で園芸的にも利用されています.
宇宙環境適応生態分野では,大学院生の北澤大典君(2007年度博士修了,総長賞受賞)を中心として,アサガオをモデルとして折り曲げによる腋芽伸長の仕組みの解析を行いました.野生型アサガオは,茎を折り曲げることにより茎頂を下方に向けると,最上部となった腋芽の休眠が打破され伸長が開始されます.私たちの解析から,茎における重力屈性欠損変異体アサガオは,頂芽を折り曲げても最上位の腋芽の伸長開始が起こらないことがわかりました.さらに,突然変異系統では頂芽の除去に対して野生型と同様に応答し,直下の節からの腋芽伸長が起こりました.これらのことから,頂芽の物理的除去による頂芽優勢の打破とは異なる機構で腋芽伸長を制御する重力応答依存的な新規システムが存在することが明らかになりました.本研究の成果はPlant and Cell Physiology誌の6月号に掲載され,同号の表紙およびEditor in Chief’s Choice(各号のハイライト記事)に選定されました.本研究から得られる知見は,植物が有する本質的な能力の証明の機構が解明されるとともに,腋芽伸長調節による植物生産性向上へむけた新技術の基盤となるものです.
論文URL:http://pcp.oxfordjournals.org/cgi/content/full/49/6/891
Plant and Cell Physiology誌:http://pcp.oxfordjournals.org/