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海洋マクロリド天然物リングビアロシドBの全合成と完全立体構造決定

海洋マクロリド天然物リングビアロシドBの全合成と完全立体構造決定

2014.11.13 15:48

生命構造化学分野

不破春彦

近年,シアノバクテリアが生産する二次代謝産物(天然物)から,強力な生物活性を示す有機化合物が多数発見されており,細胞の増殖や分化を分子レベルで解析・制御するための有用なツールとして期待されています。また,生物活性有機化合物の全立体構造を正しく帰属することは,構造活性相関や活性発現の分子機構を議論するうえで重要です。

 今回の研究では,パラオで採取されたシアノバクテリアLyngbya種から,Mooreらにより単離されたリングビアロシドBの最初の完全化学合成(全合成)に成功しました。Mooreらは,リングビアロシドBの立体構造を詳細なNMR解析にもとづいて帰属し,提出構造式を報告しました。私たちは,市販の試薬から数段階で調製できる比較的小さな化合物を,安孫子−正宗アルドール反応とビニロガス向山アルドール反応という,いずれも日本人が開発した合成反応を用いて連結したのち,アシルケテン中間体を活性種とする大環状ラクトン骨格構築法を活用して,提出構造式の全合成を達成しました。

 しかし,合成した提出構造式のNMRスペクトルデータが天然物のそれと一致しなかったことから,提出構造式の誤りが明らかとなりました。私たちはNMRデータの解析に加え,計算化学(分子力場計算)によるシミュレーションを行うことで,リングビアロシドBの全立体構造を改訂しました。さらに,改訂構造式を実際に全合成し,天然物とスペクトルデータが完全に一致したことから,私たちの改訂構造式が正しいことを証明しました。

本研究は,複雑な分子構造を有する有機小分子の立体構造決定における,化学合成の重要性を示すものです。本研究成果は独化学会誌Angewandte Chemie International Editionのオンライン版に2014年11月12日付で公表されました。

【発表雑誌】Angewandte Chemie International Edition 誌
(DOI: 10.1002/anie.201409629; published online ahead of print, November 12, 2014) 

【発表論文名】Total Synthesis, Stereochemical Reassignment, and Biological Evaluation of (–)-Lyngbyaloside B
((–)-リングビアロシドBの全合成,全立体構造決定及び生物活性評価)

【著者名】Haruhiko Fuwa,* Yuta Okuaki, Naoya Yamagata, and Makoto Sasaki

論文はこちらです

【問い合わせ先】

(研究に関すること)
東北大学大学院分子生命科学専攻 生命構造化学分野
担当 不破 春彦
E-mail hfuwa*m.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか
E-mail lifsci-pr*ige.tohoku.ac.jp  (*を@に置き換えてください) 

hfuwa*m.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えて下さい)