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体長1mmの小さな生き物 線虫の筋肉も宇宙で育てるとやせ細る -微小重力が個々の細胞レベルに及ぼす影響-

体長1mmの小さな生き物 線虫の筋肉も宇宙で育てるとやせ細る -微小重力が個々の細胞レベルに及ぼす影響-

2016.01.22 16:51

 東北大学大学院生命科学研究科の東谷篤志教授と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の東端晃主任開発員らは、国際宇宙ステーション・「きぼう」日本実験棟での宇宙実験で、モデル生物のひとつである線虫を微小重力下で育てたところ、筋肉がやせ細ることを遺伝子やタンパク質の解析で発見しました。
 国際宇宙ステーションでの二度の宇宙実験を通して、宇宙で生育させたモデル生物の一つ、線虫(C. elegans)のからだの変化を分析しました。詳細は以下の通りです。

  • 運動する頻度が極端に低下する。
  • エネルギーの代謝や個々の細胞のなかの骨組み(細胞骨格)も低下する。
  • 2回の異なる宇宙実験から、再現性の良い結果が得られた。

 「きぼう」には、同じ細胞を微小重力で育てる実験区(μG区)と遠心機によって人工的に重力を与えて育てる実験区(1G区)があります。上記の結果は、このμG区と1G区の比較によるもので、重力のあるなしを同じ環境で同時に比較したこれまでにない実験です。
 この2つの実験結果により、線虫のような大変小さく軽い生き物でも、重力は個々の細胞ごとに影響を及ぼすと考えられ、生物は微小重力環境に応じた"からだ"に変化することが強く示唆されました。

 上記の研究成果は、英国の科学誌ネイチャー・パートナー・ジャーナル「npjマイクログラビティ―(npj Microgravity)」に平成28年1月22日(アメリカ東部時間1月21日)、公開されました。

CERISEの宇宙実験の概要

【参考】
(1)線虫(Caenorhabditis elegans)とは:
土壌から見つかった1mm程の小さな線形動物で、現在ではモデル生物として研究者の間で非常に注目されています。 この線虫を使った研究では、受精卵から成虫に至るまでの全細胞の発生、分化の過程を明らかにした研究(シドニー・ブレナー博士らのグループ、2002年)や遺伝子の働きを抑えるしくみ(RNA干渉)の発見(ファイアー博士らのグループ、2006年)に対してノーベル生理学・医学賞が授与されています。

宇宙から帰還した線虫を脂質染色した写真(東北大 東谷研究室)

(2)ICE-1st実験のサイト
  http://iss.jaxa.jp/utiliz/experiment/celegans/

(3)CERISE実験のサイト
  http://iss.jaxa.jp/kiboexp/theme/first/cerise/

詳細(プレスリリース本文)PDF

【論文】
Microgravity elicits reproducible alterations in cytoskeletal and metabolic gene and protein expression in space-flown Caenorhabditis elegans

【著者】
Akira Higashibata, Toko Hashizume, Kanako Nemoto, Nahoko Higashitani, Timothy Etheridge, Chihiro Mori, Shunsuke Harada Tomoko Sugimoto, Nathaniel J. Szewczyk, Shoji A. Baba, Yoshihiro Mogami, Keiji Fukui, Atsushi Higashitani

【雑誌】
npj Microgravity

【DOI】
10.1038/npjmgrav.2015.22

問い合わせ先

国立大学法人東北大学 大学院生命科学研究科
担当:東谷 篤志(ひがしたに あつし)
電話:022-217-5715
Eメール:ahigashi*m.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

国立大学法人東北大学 大学院生命科学研究科広報室
電話:022-217-6193
Eメール:lifsci-pr*ige.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)