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葉の形態の収斂進化に関わる遺伝子を発見 育種への応用に期待

葉の形態の収斂進化に関わる遺伝子を発見 育種への応用に期待

2019.12.10 09:00

発表のポイント

  • 陸上植物の祖先は葉を持たず、二又の枝分かれを繰り返す成長をしていた。
  • 陸上植物の祖先は、コケ植物・シダ植物・種子植物に進化する過程で、生育環境に適応するために、異なる系統毎に独立に、葉を獲得した。
  • 葉は植物の系統毎に収斂進化*1的に獲得された器官であるにも関わらず、共通の分子機構で形成されることを明らかにした。
  • 植物の葉の形態の多様化・進化を駆動する遺伝子LOS1を発見した
 

概要

陸上植物の祖先は光合成組織である葉を持たず、コケ、シダ、種子植物に種分化した後、それぞれの生育環境に適応するよう、独立に葉を獲得してきました。東北大学大学院生命科学研究科の楢本悟史助教、経塚淳子教授らの研究グループは、オックスフォード大学 (Liam Dolan教授)、理化学研究所環境資源科学研究センター (豊岡公徳上級技師)、広島大学大学院統合生命科学研究科 (嶋村正樹准教授)らをはじめとしたグループと共同で、植物は系統毎に常に共通の遺伝子LOS1 (LATERAL ORGAN SUPPRESSION1) を用いて、葉の発生・成長を制御するよう進化してきたことを発見しました。植物の葉は収斂進化的に獲得されたものであることから、これまで系統間で全く異なる器官であると考えられていました。今回の発見はその常識を覆す発見であるとともに、植物の葉の多様化・進化の礎となるメカニズムの解明に繋がる重要な発見です。葉の成長は植物の生産性に直結することから、今後、本遺伝子に注目した育種への応用も期待されます。本研究結果は、米国東部時間12月9日午後2時(日本時間12月10日午前4時)、PLOS Biology誌(電子版)に掲載されました。本研究は、文部科学省科学研究費補助金の支援を受けて行われました。
 
 
 
【用語説明】
*1 収斂進化 鳥類の鳥とほ乳類のコウモリの翼のように、全く異なる系統の生物が、同じような姿・特徴をもつように進化すること。生態的環境に適応した結果、収斂進化がおこると言われている。なお、相同遺伝子による形態の類似の場合、特に平行進化と呼ぶこともある。

 

【論文題目】
題目:A conserved regulatory mechanism mediates the convergent evolution of plant shoot lateral organs
 
著者:Satoshi Naramoto, Victor Arnold Shivas Jones, Nicola Trozzi, Mayuko Sato, Kiminori Toyooka, Masaki Shimamura, Sakiko Ishida, Kazuhiko Nishitani, Kimitsune Ishizaki, Ryuichi Nishihama, Takayuki Kohchi, Liam Dolan and Junko Kyozuka

雑誌:PLOS BIOLOGY
DOI:https://doi.org/ 10.1371/journal.pbio.3000560

 

詳細(プレスリリース本文)PDF

 

【問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
担当 楢本 悟史(ならもと さとし)
電話番号: 022-217-5712
Eメール: satoshi.naramoto.d6(at)tohoku.ac.jp
 
(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか (たかはし さやか)
電話番号: 022-217-6193
Eメール: lifsci-pr(at)grp.tohoku.ac.jp