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人なつこい家畜ウサギにおける脳の進化 大規模な脳内遺伝子発現の変化を解明

人なつこい家畜ウサギにおける脳の進化 大規模な脳内遺伝子発現の変化を解明

2020.11.05 14:00

発表のポイント

  • 動植物の家畜化・栽培化の過程は「人為選択」と呼ばれ、形質の急速な進化を引き起こします。
  • ウサギの家畜化は約1400年前以降に起きたと考えられており、短期間で脳や行動の進化を遂げたと考えられます。
  • 野生・家畜ウサギの脳内における遺伝子発現を網羅的に解析し、両者のあいだで発現量に顕著な変化が見られる遺伝子群を特定しました。
  • 家畜ウサギでは、扁桃体でドーパミン関連遺伝子の発現増加、海馬で繊毛関連遺伝子の発現低下が観察されこれらが家畜ウサギの脳や行動の進化に関わっていると考えられます。

概要

 動物の家畜化は人間の手による急速な進化プロセスであり、人への懐きやすさなど、特有の形質の変化を引き起こします。家畜化に伴うそうした変化の遺伝基盤の解明は進化生物学における重要なテーマの一つです。東北大学大学院生命科学研究科の佐藤大気(博士後期課程学生)は、留学先であるウプサラ大学のLeif Andersson教授、ポルト大学のMiguel Carneiroグループリーダーらと共同で、野生・家畜ウサギのあいだで脳内発現量が変化している遺伝子群を特定しました。扁桃体でのドーパミン関連遺伝子群の発現増加、および海馬での繊毛関連遺伝子群の発現低下が顕著に観察され、これらが家畜ウサギの脳の変化や人への懐きやすさといった行動に関連している可能性が考えられます。
 本研究は、動物の家畜化に伴う行動進化の遺伝的基盤について示唆を与える研究成果です。 本研究結果は、Genome Biology and Evolution誌10月号に掲載されました。
 本研究は、佐藤氏が本学データ科学国際共同大学院(GP-DS)のプログラムによるウプサラ大学留学時の研究成果です。

 

図1. 野生・家畜ウサギ間で発現量に大きな変化が見られた遺伝子群。家畜ウサギでは、扁桃体でドーパミン関連遺伝子群の発現増加、海馬で繊毛関連遺伝子群の発現低下が顕著に見られた。
 
 
 
 
【論文情報】
雑誌名:Genome Biology and Evolution
 
論文タイトル:Brain transcriptomics of wild and domestic rabbits suggests that changes in dopamine signaling and ciliary function contributed to evolution of tameness.
 
著者Daiki X. Sato†, Nima Rafati†, Henrik Ring, Shady Younis, Chungang Feng, José A. Blanco-Aguiar, Carl-Johan Rubin, Rafael Villafuerte, Finn Hallböök, Miguel Carneiro and Leif Andersson (†Co-first authors)
 

 

 
 
 
 
【お問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
担当 佐藤 大気(さとう だいき)
Eメール:daiki.sato12@gmail.com
 
(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか(たかはし さやか)
電話:022-217-6193
Eメール:lifsci-pr(at)grp.tohoku.ac.jp