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東日本大震災の津波で変化した沿岸生態系が回復 延べ500人余の市民ボランティアとの調査で判明

東日本大震災の津波で変化した沿岸生態系が回復 延べ500人余の市民ボランティアとの調査で判明

2022.11.22 11:00

発表のポイント

  • 2011年3月11日の東日本大震災で発生した大津波は、仙台湾に点在する干潟に生息する生物種を減少させるなど生態系に大きな影響を及ぼした。
  • これら生態系がこれまでと異なった姿になるのか、それとも元の姿に戻るかを評価するため、市民ボランティアとともに毎年継続的な調査を行った。
  • その結果、震災7年後にはほとんどの干潟で生物群集が元の姿に戻ったことが確認され、東北沿岸はレジリエンス(回復力)の高い生態系であることが分かった。
 

概要

 
 2011年3月11日の東日本大震災で発生した大津波は、東北の沿岸生態系に大きな影響を及ぼしました。しかしその後、それらの生態系がどのような経過を辿るかは不明でした。そこで東北大学大学院生命科学研究科の柚原剛研究員、占部城太郎教授らは、国立環境研究所や宮城県内の高校教員らと研究チームを組み、延べ500人の市民ボランティアの協力を得て、仙台湾に点在する8つの干潟注1を対象とし震災前後10年に渡る生物多様性調査を実施しました。 その結果、どの干潟でも震災後数年で以前生息していた種が確認されるようになり、特に周囲環境が元にもどった干潟の生物群集注2は7〜9年後には震災前と区別がつかなくなりました。東北沿岸の干潟の生物群集は、周囲環境が変化しなければ、津波による生態系撹乱から10年程度で回復するレジリエンスの高い生態系であることが分かりました。 本研究成果は、2022年11月10日付けで、海洋学の国際トップジャーナルLOレター誌(Limnology and Oceanography Letters)に掲載されました。
 
図 8つの干潟で観察された生物群集の変化。図中のシンボルの位置が近い干潟や年ほど生物群集が似ていることを示す。aは震災前の生物群集を示し、b、cは各干潟を特徴づける生物種とその和名を、bの矢印の方向は、aと重ねた場合に、その生物が良く出現することを示している。例えば、蒲生干潟(奥部)ではカワゴガイ類(Hed)やアリアケモドキ(Dc)の出現頻度が高く、双観山干潟ではケフサイソガニ類(Hem)やタマシキゴカイ(Ar)の出現頻度が高かったことを示している。d、 eは各干潟における生物群集の震災前(□)から2019年までの変遷を示し、◯内の数値は観察年の下2桁を(例えば2012年の場合は⑫)を示す。色付きの◯は生物群集が震災前(□)と有意に異なっていたことを示しており、生物群集はいずれの干潟でも震災後数年は震災前と異なっていた。しかし、年を追って生物群集を示す位置が次第に震災前の位置に近づいており、蒲生干潟(奥部)を除くと、生物群集が震災前の状態に回復してきたことが分かった。
 
 
【用語説明】
注1:干潟:海岸に発達する砂や泥を底質とする海域で、干潮時には干上がって陸地となり、満潮時には水没するエリア。
注2:生物群集:同じ生息場所で生活している生物種の総体のこと。2つの生息場所(干潟)間で生物群集が大きく異なるとは、それらの場所に共通して生活している生物種が少ないことを意味している。
 
 
【論文情報】
Takeshi Yuhara, Takao Suzuki, Tatsuki Nishita, Junichi Murakami, Wataru Makino, Gen Kanaya, Kyoko Kinoshita, Natsuru Yasuno, Takashi Uchino, Jotaro Urabe. (2022) Recovery of macrobenthic communities in tidal flats following the Great East Japan Earthquake. Limnology Oceanography Letters.
 
 
 
【問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
教授 占部 城太郎 (うらべ じょうたろう)
電話番号:022-795-6681
Eメール: urabe(at)tohoku.ac.jp
 
(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか (たかはし さやか)
電話番号: 022-217-6193
Eメール: lifsci-pr(at)grp.tohoku.ac.jp
 
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