発表のポイント
- ネオニコチノイド系殺虫剤(注1) が動物プランクトンに及ぼす影響はよくわかっていませんでした。
- 代表的なネオニコチノイド系殺虫剤であるイミダクロプリドを用いて、27種の淡水生動物プランクトンに対する急性毒性試験を実施しました。
- その結果、イミダクロプリドの毒性は種特異的で、湖や水田に生息するケンミジンコ類(注2)への影響が特に強いことがわかりました。
概要
ネオニコチノイド系殺虫剤は、世界中で使用されている農薬ですが、生物への悪影響が懸念されています。特に、動物プランクトンは水質や漁獲に関わる生物であり、水圏に暴露された農薬の影響を把握することは、生物多様性のみならず生態系を保全するうえで重要です。しかし、農薬の動物プランクトンに対する影響はミジンコ類など一部の種でしか調べられておらず、多種に対する影響評価は行われていませんでした。
東北大学大学院生命科学研究科の鈴木碩通大学院生(博士課程)、牧野渡助教と占部城太郎教授(現:名誉教授)、同工学研究科の高橋真司技術職員らのグループは、湖沼や水田に生息する動物プランクトン27種を対象に、ネオニコチノイドの1つであるイミダクロプリドの毒性評価を行いました。
検証の結果、イミダクロプリドの毒性影響は近縁種間でも大きく異なり、従来の研究では注目されてこなかったケンミジンコ類に対して特に大きいことがわかりました。ケンミジンコ類は湖沼や水田の主要な動物プランクトンです。本研究から、農薬に対する水生生物の群集(注3)応答を理解するためには、広範な分類群を対象とした検証が不可欠であることが示されました。
本研究成果は科学誌 Science of The Total Environment に2024年4月13日付でオンライン公開されました。
東北大学大学院生命科学研究科の鈴木碩通大学院生(博士課程)、牧野渡助教と占部城太郎教授(現:名誉教授)、同工学研究科の高橋真司技術職員らのグループは、湖沼や水田に生息する動物プランクトン27種を対象に、ネオニコチノイドの1つであるイミダクロプリドの毒性評価を行いました。
検証の結果、イミダクロプリドの毒性影響は近縁種間でも大きく異なり、従来の研究では注目されてこなかったケンミジンコ類に対して特に大きいことがわかりました。ケンミジンコ類は湖沼や水田の主要な動物プランクトンです。本研究から、農薬に対する水生生物の群集(注3)応答を理解するためには、広範な分類群を対象とした検証が不可欠であることが示されました。
本研究成果は科学誌 Science of The Total Environment に2024年4月13日付でオンライン公開されました。
図1. 上段:実験に用いた動物プランクトンの分類群、ミジンコ類(左)、ヒゲナガケンミジンコ類(中央)、ケンミジンコ類(右)の例。
下段:急性毒性試験の結果、イミダクロプリドに暴露した27種の動物プランクトンのうち、ケンミジンコ類ではすべての種で死亡率が上昇した
下段:急性毒性試験の結果、イミダクロプリドに暴露した27種の動物プランクトンのうち、ケンミジンコ類ではすべての種で死亡率が上昇した
【用語説明】
注1. ネオニコチノイド系農薬:1992年に日本で農薬登録され、その害虫被害防除効率の高さから世界中で使用されている。ネオニコチノイドは複数の物質の総称であり、中でもイミダクロプリドは最初に開発され、今もなお一般的なネオニコチノイド系農薬の1つである。
注1. ネオニコチノイド系農薬:1992年に日本で農薬登録され、その害虫被害防除効率の高さから世界中で使用されている。ネオニコチノイドは複数の物質の総称であり、中でもイミダクロプリドは最初に開発され、今もなお一般的なネオニコチノイド系農薬の1つである。
注2. ケンミジンコ類:エビ・カニと同じ甲殻類で、橈脚亜綱(とうきゃくあこう)のうちケンミジンコ目に属する生物のこと。日本には淡水生の種が約40種分布している。今回の実験にはオナガケンミジンコ (Cyclops vicinus)、オオケンミジンコ (Macrocyclops fuscus)、アサガオケンミジンコ属の1種 (Mesocyclops sp.)、Thermocyclops crassus(和名なし)、タイホクケンミジンコ (Thermocyclops taihokuensis)、ヒメケンミジンコ属の1種 (Tropocyclops sp.) の計6種を使用した。
注3. 生物群集:同じ場所に生息する生物種の総体のことを称す。
【論文情報】
Hiromichi Suzuki*, Wataru Makino, Shinji Takahashi, Jotaro Urabe (2024) Assessment of toxic effects of imidacloprid on freshwater zooplankton: An experimental test for 27 species. Science of The Total Environment
DOI:10.1016/j.scitotenv.2024.172378
URL: https://doi.org/10.1016/j.scitotenv.2024.172378
DOI:10.1016/j.scitotenv.2024.172378
URL: https://doi.org/10.1016/j.scitotenv.2024.172378
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(うらべじょうたろう)
Email: urabe(at)tohoku.ac.jp
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東北大学生命科学研究科広報室
高橋さやか
TEL: 022-217-6193
Email: lifsci-pr(at)grp.tohoku.ac.jp
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