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生きた細胞内のタンパク質シグナルを光と特殊な分子で自在に操作する技術 ~マイトファジーの分子機構の理解に貢献~

生きた細胞内のタンパク質シグナルを光と特殊な分子で自在に操作する技術 ~マイトファジーの分子機構の理解に貢献~

2024.06.24 08:30

【発表のポイント】

  • 光を当てると構造が変化する分子(フォトクロミック化合物)を用いて、細胞内の蛋白質の局在や相互作用を自在に操作する技術を開発しました。
  • 細胞質に存在する酵素をミトコンドリアへ移動させることで、ミトコンドリアを選択的に分解するマイトファジー(注1)を引き起こす細胞内シグナル伝達を調節できる技術です。
  • パーキンソン病を含む神経変性疾患の疾患機序の解明への貢献が期待されます。
 

【概要】

 顕微鏡で観察しながら、光を当てて生体分子や細胞の機能を操作する技術は、生命や疾患の仕組みを理解するための革新技術として大きな注目を集めています。
 東北大学多元物質科学研究所・生命科学研究科・理学研究科の小和田俊行准教授、水上進教授らの研究グループは、日本医科大学先端医学研究所の山本林教授らとの共同研究で、光で色や構造が変化するフォトクロミック化合物(注2)と呼ばれる分子を用いて、生きた細胞内の蛋白質の局在を迅速かつ定量的に操作する技術を開発し、マイトファジーの分子機構の解明のために応用しました。
 本研究成果は、パーキンソン病などの神経変性疾患をはじめとする様々な疾患の機構解明につながることが期待されます。
 本研究成果は、2024年6月18日18時(日本時間)に、科学誌Nature Chemical Biologyにオンライン公開されました。
 
 
 図. フォトクロミック二量化剤 pcDH の構造と、フォトクロミック CID 法の模式図
 
 
【用語解説】
注1. マイトファジー
損傷したミトコンドリアを選択的に分解することでミトコンドリアの品質管理を行う細胞本来の自食作用(オートファジー)です。マイトファジーの一部の機構にはParkin(パーキン)が関与しています。Parkinはパーキンソン病の原因遺伝子とも言われています。
注2. フォトクロミック化合物
光を吸収すると構造が異性化して、色調(吸収スペクトル)が変化する化合物のことで、サングラスなどの調光材料の原料として用いられている。アゾベンゼンは古くから有名なフォトクロミック化合物あり、光照射によってシス-トランス異性化反応を起こすことが知られています。
 
 
 
【論文情報】
Takato Mashita#, Toshiyuki Kowada#, Hayashi Yamamoto, Satoshi Hamaguchi, Toshizo Sato, Toshitaka Matsui & Shin Mizukami* (2024) Quantitative control of subcellular protein localization with a photochromic dimerizer. Nature Chemical Biology
# 共同筆頭著者 * 責任著者

DOI:https://doi.org/10.1038/s41589-024-01654-w

 
 
 
 
【関連リンク】
 
 
【問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
教授 水上 進
TEL: 022-217-5116
Email: shin.mizukami*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
 
(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所 広報情報室
TEL: 022-217-5198
Email: press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
 
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