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自然毒食中毒の毒性分(カリブ海型シガトキシン) 右半分構造の化学合成を効率化 〜世界最大規模のカリブ海型シガテラ中毒の撲滅を目指して〜

自然毒食中毒の毒性分(カリブ海型シガトキシン) 右半分構造の化学合成を効率化 〜世界最大規模のカリブ海型シガテラ中毒の撲滅を目指して〜

2024.12.06 11:00

【発表のポイント】

  • 自然界から純粋な試料の収集が困難な世界最大規模の急性自然毒食中毒、シガテラ中毒の主要原因毒であるカリブ海型シガトキシン(C-CTX)の分子の右半分の構造の化学合成を効率化に成功しました。
  • シガテラ中毒予防のための微量検出法開発に必要な抗体作成を可能にし、さらに標準試料の提供のための全合成への道を拓く重要な研究成果です。

【概要】

 シガテラ中毒は、熱帯・亜熱帯海域の魚類の摂取により発生する世界最大規模の急性自然毒食中毒であり、年間2~6万人の中毒患者が発生しています。その原因毒であるシガトキシン(CTX)類(注1)は、渦鞭毛藻により産生され、食物連鎖を通じて魚類に蓄積される複雑な巨大ポリ環状エーテル天然物(注2)です。CTX類は基本骨格の異なる太平洋型、インド洋型、カリブ海型に分類され、近年、カリブ海型シガトキシン(C-CTX)による中毒発生が温帯域に拡大・多発する傾向にあり、その予防対策は世界的に急務の課題となっています。
 東北大学大学院生命科学研究科の佐々木誠教授らのグループは、2022年にC-CTXの分子右半分の構造の化学合成に初めて成功しました。今回、遷移金属触媒を用いた環化反応やカップリング反応を駆使してC-CTXの分子右半分の構造の効率的な化学合成に成功しました。本成果はシガテラ中毒予防のための微量検出法開発に必要な抗体作成と世界初の全合成(注3)への道を拓く重要な成果です。
 本成果はアメリカ化学会誌 The Journal of Organic Chemistry に12月4日付で掲載されました。
 
 
 
図1. カリブ海型シガトキシンC-CTX-1の化学構造

【用語説明】
注1.    シガトキシン類:シガテラ食中毒の主要原因毒であり、単細胞藻類の一種である渦鞭毛藻が生産し、食物連鎖を介して多様な魚類に蓄積される。電位依存性ナトリウムイオンチャネルに結合し、これを活性化することにより、強力な神経毒性を発現する。

注2.    ポリ環状エーテル天然物:多数のエーテル環が梯子状に連なった特異な構造を有する海洋天然物である。その多くが巨大な化学構造と強力な生物活性を有している。

注3.    全合成:天然物を適切にデザインした合成経路を経て人工化学合成すること。多段階の精密有機合成反応を駆使して達成される。

 

【論文情報】
Makoto Sasaki,* Miyu Ohba, Ako Murakami, and Atsushi Umehara. (2024) Convergent and Scalable Second-Generation Synthesis of Fully Functionalized HIJKLMN-Ring Segment of Caribbean Ciguatoxin C-CTX-1. The Journal of Organic Chemistry
DOI:10.1021/acs.joc.4c02723
URL: https://doi.org/10.1021/acs.joc.4c02723
 
 
 
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【問い合わせ先】
(研究に関すること)
 東北大学大学院生命科学研究科
 教授 佐々木 誠(ささき まこと)
 TEL: 022-217-6212
 Email: masasaki(at)tohoku.ac.jp
 
(報道に関すること)
 東北大学大学院生命科学研究科広報室
 高橋 さやか(たかはし さやか)
 TEL: 022-217-6193
 Email: lifsci-pr(at)grp.tohoku.ac.jp
 
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