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研究科概要

研究科長あいさつ

東北大学大学院生命科学研究科長 彦坂 幸毅


東北大学大学院生命科学研究科長
彦坂 幸毅

 
生態学には「ニッチ」(あるいはニッチェ)という言葉があります。ニッチは、もともとは装飾品や植物を置くために壁に作られた窪み(壁龕)のことを指しますが、生態学では、ある種の個体が生存、成長、繁殖できる環境特性の範囲、と定義されます。地球上には様々な環境がありますが、多くの生物種はあらゆる環境で生存することができるわけではありません。ニッチを確保できたもののみが生き延びることができます。
 
 
「ニッチ」は、日本語では「生態学的地位」と訳されますが、この訳はもうあまり使われていません。むしろ、ニッチ産業(すきま産業)などと一般社会でも使われる言葉になってきています。ただ、一般社会で「ニッチ」が使われるときには、そこには「狭い範囲」というニュアンスが含まれているように感じます。生態学で使われる「ニッチ」には、必ずしもそのようなニュアンスはありません。広範囲のニッチをもつ生物もいて、そのような種は「ジェネラリスト」と呼ばれます。狭い範囲のニッチしかもたない種は「スペシャリスト」と呼ばれます。
 
 
私たち生命科学研究科が目指しているのは生命科学のジェネラリストです。分子から生態系まで、幅広い階層の研究者(スペシャリスト)が集まることで、生命科学のあらゆる階層を網羅しています。それぞれの研究者が世界最先端を目指すだけでなく、異なる階層の研究者が協働して研究を行うことで、新たな研究領域の創造を目指しています。他の研究機関には真似のできない、新しいニッチを開拓しています。
 
 
2024年に、東北大学は国際卓越研究大学として認定されました。世界的に卓越した研究、指導的人材の育成、社会の多様なパートナーとの共同を通して、平和で公正な人類社会の実現に貢献することを使命とし、様々な変革と挑戦を始めています。生命科学研究科も、最先端研究者の登用、新たな国際化教育、研究設備の充実を目指して動き始めました。さらにインパクトの高い研究成果をあげること、社会に貢献する学生を育てることを目指し、進化し続けていきたいと思います。  
 
 
 
 
令和7年4月1日