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研究

受賞

研究

宮沢豊助教が、2010年度日本植物学会奨励賞を受賞

宮沢豊助教が、2010年度日本植物学会奨励賞を受賞

2010.09.01 09:57

生態システム生命科学専攻 宇宙環境適応生態分野

宮沢 豊

 生態システム生命科学専攻・宇宙環境適応生態分野の宮沢豊助教が、「根の水分屈性制御分子の同定とその水分屈性ならびに屈性間相互作用に対する機能の研究」で、2010年度日本植物学会奨励賞を受賞しました。
 陸上植物が、固着性というハードルを越えて独立栄養性を発揮しながら動物に先んじ地上で繁栄してきた背景には、陸上植物が独自の環境適応能力を獲得してきたことがあり、その環境適応能力が現在の生態系構築の基盤となっています。中でも、水環境適応能力は、水がすべての生命体にとって必要不可欠な物質であること、固着性ゆえに移動による給水ができないことの2点から、植物にとって自身の生存を決定づける最も大きな要因であると言えます。植物の水分環境に応じた成長制御に関する科学的記述として、19世紀より主要な吸水器官である根が水分の多い方へ向かい成長する水分屈性の存在が示唆されてきました。しかしながら、近年に至るまで水分屈性を科学的に確証するものはなく、その重要性にもかかわらず、全く理解が進みませんでした。その理由として水分屈性を誘導するための水分勾配の形成法の確立や、根の有する重力、光、接触といった種々の要因を排除して解析を行う実験系が確立されていなかったことにあります。宮沢助教らは、上記課題に対して、水分屈性を制御する分子の同定とともに、水分屈性と水分屈性と干渉しあう重力屈性の相互作用機構の研究を進めました。そして、オーキシンによる水分屈性制御機構の重力屈性機構との異同を明らかにするとともに、レーザーや重粒子線照射を用いた解析により水分屈性に必要とされる細胞群を同定しました。また、これらの解析と並行して、これまで全く同定されてこなかった水分屈性に必須の機能を有する分子を明らかにすべく、水分屈性が異常になるシロイヌナズナ突然変異体(mizu-kussei: miz)の解析を行い、世界で初めて水分屈性に必須の役割を持つ遺伝子(MIZ1MIZ2)の同定に成功しました。MIZ1は陸上植物に特有で機能未知のドメイン(MIZドメイン)を含む新規タンパク質をコードする遺伝子であり、MIZ2はADPリボシル化因子のグアニン交換因子(ARF-GEF)をコードしていました。これらの解析を進めることにより、水分屈性の重力屈性との相互作用機構が明らかなり、さらに水分屈性が固有の制御機構を有していることを明らかにしました。これらの成果は、水という生命体の根源をなす物質を基盤とした根の伸長方向制御機構を説明し得る生理学的、分子生物学的基盤を構築したものとして高く評価されました。

本賞については下記HPを参照ください
http://bsj.or.jp/jimu/prize.htm