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研究

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小口理一助教が「平成25年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞」を受賞

小口理一助教が「平成25年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞」を受賞

2013.04.09 11:29

所属 : 生態システム生命科学専攻 機能生態学分野
氏名 : 小口 理一 助教

 生態システム生命科学専攻 機能生態学分野の小口理一助教は、平成25年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞しました。表彰式は4月16日(火)に文部科学省にて行われます。科学技術分野の文部科学大臣表彰とは、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者について、その功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、もって我が国の科学技術水準の向上に寄与することを目的としています。若手科学者賞は、萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた40歳未満の若手研究者を対象とした賞です。今回受賞の対象となった研究業績は、「光環境変化に対する光合成光順化と光阻害メカニズムの研究」であり、下記の一連の研究が、遺伝子レベルのメカニズム解明だけでなく、野外における光環境の変化が成長速度や生存にどのように影響するかという個体レベルの生態現象の理解、生態系の応答予測の観点からも、将来の発展が大いに期待される点が高く評価されました。
 植物が受ける光環境は上層個体の撹乱・枯死で大きく変化します。この変化に対する光合成応答は種間で異なっており、ニッチの違いをもたらしていると考えられてきましたが、その種間差のメカニズムは明らかではありませんでした。そこで、小口助教は、光強度上昇に対し光合成能力を上昇させる光順化と、光合成能力の低下を引き起こす光阻害にわけて、光応答の種間差のメカニズムを研究しました。光順化については、葉緑体が光合成の基質であるCO2を受け取るために葉肉細胞表面で細胞間隙に接するように存在する必要がある事に着目し、葉の内部で葉緑体が存在できる空間の大きさの種間差が順化能力の違いを生み出している事を初めて発見しました。またこの光順化のメカニズムが自然環境でも起きている事を、冷温帯広葉樹林での野外実験により実証しました。光阻害については、葉の内部での光強度の減衰により光阻害の程度にも葉の内部で勾配がある事に注目し、その勾配が阻害光の色によって異なる事を初めて明らかにしました。この結果と、阻害の原因と考えられている吸光物質の吸光スペクトルを比較する事で、複数の光阻害メカニズムが同時に関わっている事を明らかにしました。また葉内での光阻害の勾配は、光阻害測定に最も広く用いられるクロロフィル蛍光法に誤差をもたらす事も明らかにしました。これらの研究成果は、光合成の光環境変化に対する応答を効率化して農林産物の生産向上を行うための基礎的知見をもたらすと期待されています。

文部科学省の発表は下記URLからごらんください。
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/25/04/1332785.htm