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ピリミジン二量体光回復酵素の構造変異と植物のUVB耐性機構

ピリミジン二量体光回復酵素の構造変異と植物のUVB耐性機構

2004.11.20 16:26

日本放射線影響学会奨励賞 

ピリミジン二量体光回復酵素の構造変異と植物のUVB耐性機構

所属:生態システム生命科学専攻・臨界環境遺伝生態分野
名前:日出間純
URL:http://www.ige.tohoku.ac.jp/rinkai/home_j.html
受賞年月: 平成16年11月

これまでに、環境紫外線UVB量の増加が植物の生育にどのような影響を及ぼすか、そして高等植物のUVB耐性機構を明らかにし、UVBが増加した環境においても耐性な植物、特に農作物を創出することを目的に研究を行っている。本研究を遂行するに当たっては、育種上近縁(遺伝学的に変異が狭小である)でありながらUVB抵抗性が異なるイネ品種を主な材料に、UVB抵抗性差異に関わる遺伝子資源の探索を、分子生物学的、生化学的な観点から解析を行った。その結果、(1)UVB抵抗性差異の主要因は、UVBによって誘発されるシクロブタン型ピリミジン二量体(CPD)を修復する光回復酵素の活性の違いに起因していること、(2)さらにこの活性の違いは、自然突現変異による1アミノ酸の変化によって生じた構造変化に由来していることを見いだした。現在、CPD光回復酵素遺伝子形質転換体イネを作製し、光回復酵素の1アミノ酸変異がUVB抵抗性を変化させることの検証を行っている。また、これまでの研究成果をもとに、遺伝的背景が異なり世界各地で栽培されるイネ品種や野生イネ、さらには他の植物種の光回復酵素遺伝子内には、多数の変異が存在している可能性に着目し、UVB抵抗性が異なる世界各地のイネ品種・野生イネ種、他の植物を材料に、光回復酵素の変異と活性と、UVB抵抗性との関係を調査している。これまでに、CPD光回復酵素活性を大きく変化させるアミノ酸と変異部位を数カ所見出し、これらの変異による活性の違いが、UVB抵抗性の違いに影響を及ぼしていることを明らかにしつつある。本研究は、植物のUVB耐性機構を考える上での光回復酵素の重要性、植物の進化、育種の過程における自然突然変異の実態、さらには、未だ不明な点が多い高等生物型CPD光回復酵素の構造と機能・特性を明らかにできると考えている。また今後は、植物におけるCPDの生成と蓄積による致死と突然変異誘発機構、光回復酵素の生体内での修復特性とその放射線影響学的な意義についても明らかにしたいと考えている。