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“All thumbs: 不器用な人”なんて分子生物学的にいないんですよ

“All thumbs: 不器用な人”なんて分子生物学的にいないんですよ

2008.03.01 18:28

それぞれの指のかたちの違いの分子メカニズムを解明

所属:神経機能情報研究分野
名前:鈴木孝幸

 ふと日常何気なく使っている手を見てみると、とてもおもしろい形をしていることに気付く。ヒトは手足に5本の指をもっており、それぞれの指は前後軸上に沿って異なる形態をしている。親指は他の指と比べて指骨の数が少なく短い。また小指は中央の3本の指に比べて小さい。それではこのようなそれぞれの指のかたち作りの違いは どのような分子メカニズムによって決まっているのであろうか?
 今回アメリカWisconsin大との研究により、親指から小指にかけての指のかたちの違いは、胎児期において指の発生中に指先の細胞群が受け取るBMP(骨形成成長因子)の量の違いによって生み出される事が分かった。
 この中でBMPは発生中の水かき(指間部)の部分から供給されており、そのシグナルは指先の部分の100個ほどの細胞集団に伝わっている事が分かった。今回この領域を新たにPFR(phalanx forming region)と名付けた。このPFRの細胞群はこの細胞領域だけで指を作る事ができる。図はニワトリの背中にPFRを含む細胞群を移植した時にできた異所的な指である。

これまで親指(thumbs)と人差し指の違いなどを、分子レベルで示した結果は無く、今回の成果はヒトを含めた陸上四肢類の手足の進化の仕組み、何故ヒトの指は5本あるのかを解き明かす大きな糸口となる。同じ号の特集記事では“All thumbs: 不器用な人”なんて分子生物学的にいないんですよ、と紹介された。
 また指形成に重要な細胞群が見つかった事で、今後の指の再生研究への応用も期待される。

本研究成果は、3月18日付で米科学アカデミー紀要 (PNAS) 電子版に掲載されました。
またこの号のThis week in PNASに選ばれ、特集記事が組まれました。

Suzuki, T., Hasso, S. M., and Fallon, J. F.(2008)
Unique SMAD1/5/8 activity at the phalanx-forming region determines digit identity.
Proc Natl Acad Sci U S A. 18, 4185-4190.