学際科学フロンティア研究所 新領域創成研究部
生命科学研究科 生態システム生命科学専攻 ゲノム継承システム分野
泉正範
東北大学学際科学フロンティア研究所・同生命科学研究科の泉正範(いずみまさのり)助教、同大学生命科学研究科の日出間純(ひでまじゅん)准教授は、同大学農学研究科、東京理科大学、東京工科大学と共同で、生物が自らの細胞の一部を分解するための機構で、自食作用とも呼ばれる「オートファジー」が、イネの葉緑体を分解する役割を担っていることを明らかにしました。
大地に根を張り移動しないまま成長する植物は、根から吸収した栄養素を何度も再利用しながら成長しています。特に、細胞内で光合成を行う「葉緑体」には大量の栄養素が含まれており、植物は、古くなった葉の葉緑体を一度分解して、窒素などの栄養分を新しく作る葉に運んで再利用し、最終的には種や実に蓄えることで次の世代を生み出します。我々がいつも食べている米、つまりイネにおいても、新しい葉の窒素の約半分、穂の窒素の8割ほどが、このようなリサイクル窒素によりまかなわれることが知られていました。しかしその際、古い葉で葉緑体がどのように分解されるのかは長らく未解明のままでした。
泉助教らは、緑色や赤色の蛍光を発するタンパク質(GFP、RFP)を利用したライブセルイメージング技術をイネ植物体に適用し、イネの生きた葉や根でオートファジーを可視化することに成功しました。さらに、葉緑体の内腔がGFPで光るイネを作出し、葉緑体の一部分だけがちぎられて、内腔の成分が部分分解されるオートファジーを可視化しました(図1)。本成果は、今後イネの体内栄養リサイクルをより詳細に理解し、「効率的に栄養を利用できるイネを作る」といった応用研究への発展を支える成果であると言えます。
本研究の成果は、米国植物生理学会誌Plant Physiologyの2015年4月号に掲載されました。
図1. GFPで視た葉緑体の自食作用
葉緑体がGFPで光るイネの葉を顕微鏡で見た図(右)と、そのGFP蛍光を検出した図(左)。4つの細胞が写っており、大きなGFPの丸が葉緑体、細胞の中心にある小さな粒が葉緑体からちぎられて運ばれたオートファジー(自食作用)の小胞。
【著者】
Masanori Izumi, Jun Hidema, Shinya Wada, Eri Kondo, Takamitsu Kurusu, Kazuyuki Kuchitsu, Amane Makino, Hiroyuki Ishida
【雑誌】
Plant Physiology
【巻貢】
167: 1307-1320
【DOI】
10.1104/pp.114.254078
【問い合わせ先】
東北大学大学院生命科学研究科ゲノム継承システム分野
担当 助教 泉 正範(いずみ まさのり)
電話:022-217-5745
E-mail: m-izumi*ige.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えて下さい)