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イネ葯低分子RNAの網羅的解析と耐冷性との比較解析

イネ葯低分子RNAの網羅的解析と耐冷性との比較解析

2016.10.31 14:33

【研究概要】

東北大学大学院生命科学研究科・渡辺教授らのグループは、イネ出穂前の穂孕期での耐冷性の異なる品種(ササニシキ、ひとめぼれ)を用い、葯で発現する低分子RNAを網羅的に解析し、耐冷性に関わる低分子RNAを同定しました。本研究は、東北、北海道などで現在でも問題となっている冷害克服に向けた基盤を構築するとともに、耐冷性の分子メカニズムの理解、さらには、低分子RNAを介した耐冷性克服の可能性も期待できます。本研究結果は10月13日に国際雑誌「Genes Genet. Syst.」に掲載されました。なお、本研究は科研費(MEXT, JSPS)の助成を受けたものです。

【研究内容】 近年、夏の高温により、イネ出穂前の穂孕期に低温になることに起因する「障害型冷害」の発生率は下がっていますが、その分子メカニズム、克服技術が確立されたわけではありません。この「障害型冷害」の分子メカニズムの解明に向けて、耐冷性の異なるイネ品種(極強のひとめぼれ、やや弱のササニシキ)を常温区、低温区で栽培し、それぞれの処理区の葯で発現している低分子RNAの網羅的解析を行いました。そのうちの、15の低分子RNAは、穂孕期である1核期の葯において、低温区での発現が2品種で異なっており、それらの中には、花粉成熟に機能する葯タペート細胞での重要な機能をしていると言われている活性酸素の発現制御に関わる遺伝子などが見られました。今後、これらの低分子RNAの発現制御により、穂孕期耐冷性をイネで克服できる可能性も期待できると考えています。 本研究は、古川農業試験場、明治大学、大阪教育大学、三重大学との共同研究で行われました。研究成果は、国際雑誌「Genes Genet. Syst.」に受理され、2016年10月13日にオンライン版として発表されました。なお、本研究は科研費(MEXT, JSPS)の助成を受けたものです。


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【図】古川農場試験場でのイネ栽培の様子

【論文】 Comparative analysis of microRNA profiles of rice anthers between cool-sensitive and cool-tolerant cultivars under cool-temperature stress.

【著者】 Shunsuke Maeda, Satomi Sakazono, Hiromi Masuko-Suzuki, Midori Taguchi, Kaori Yamamura, Kuniaki Nagano, Takashi Endo, Kenichi Saeki, Masaaki Osaka, Moe Nabemoto, Kana Ito, Toru Kudo, Masaaki Kobayashi, Mizuho Kawagishi, Kotomi Fujita, Hikaru Nanjo, Tomoe Shindo, Kentaro Yano, Go Suzuki, Keita Suwabe, and Masao Watanabe

【雑誌】Genes Genet. Syst.

【DOI】doi.org/10.1266/ggs.15-00056

【問い合わせ先】

東北大学大学院生命科学研究科植物生殖遺伝分野
渡辺 正夫(わたなべ まさお)
電話番号:022-217-5681
Eメール:nabe*ige.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えて下さい)