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研究

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ネギ萎凋病の抵抗性に関与する遺伝子群の特定に成功−近縁種シャロットがもつ抵抗性をネギに導入することで国内初の抗性品種育成を目指す−

ネギ萎凋病の抵抗性に関与する遺伝子群の特定に成功−近縁種シャロットがもつ抵抗性をネギに導入することで国内初の抗性品種育成を目指す−

2017.08.21 13:18

発表のポイント

  • ネギ萎凋病*1(図1)は、近年、西日本の葉ネギ生産地に深刻な被害を及ぼしている難防除病害である。特に、夏季高温時に発生が増加し、施設栽培において土壌が乾燥状態となる時に発生が多くなる。
  • 感受性のネギと抵抗性のシャロット*2(図2)の掛け合わせから得られた単一異種染色体添加系統シリーズ*3(以下、添加系統シリーズ、図3)を用い、抗菌成分として知られるサポニン類の生合成経路中の遺伝子発現を網羅的に比較解析した結果、萎凋病抵抗性に関与する遺伝子群を特定した(図4)。
  • 本研究成果は国内初の萎凋病抵抗性品種の育成に貢献することが期待され、抵抗性ネギ品種が育成されると、現在行われている殺菌剤の使用回数を減らすことができ、国産ネギの生産コストと生産労力を劇的に削減できる可能性がある。
 

概要

 東北大学大学院生命科学研究科の佐藤修正准教授は、山口大学大学院創成科学研究科(農学系学域)の執行正義教授、かずさDNA 研究所ゲノム情報解析部の平川英樹グループ長、東京大学大学院新領域創成科学研究科の鈴木穣教授、東京農業大学の峯洋子教授、田中啓介研究員との共同研究により、萎凋病感受性のネギと同病害に抵抗性を有する近縁種シャロットの掛け合わせから得られた添加系統シリーズを用いて抗菌成分として知られるサポニン類の成合成経路中の遺伝子発現を網羅的に比較解析しました。その結果、萎凋病抵抗性に関与する遺伝子群を特定することができました。本研究成果は、2017 年8 月11 日付で国際科学雑誌PLoS ONE 電子版に掲載されました。本研究は、日本学術振興会科学研究費助成事業、文部科学省科学研究費補助事業(新学術ゲノム支援)および東京農業大学生物資源ゲノム解析センターのサポートを受けて行われました。
 
【用語説明】
*1 ネギ萎凋病:アナモルフ糸状菌の Fusarium oxysporum(フザリウム オキシスポルム)により引き起こされ、西日本のネギの栽培では最も被害が大きい病害。しかし、これまでに抵抗性品種が開発されていないため、薬剤防除を中心とした総合的な防除対策を講じるしかないが、完全に発病を防ぐのは非常に困難である。
*2 シャロット:東南アジアでよく栽培されているサイズの小さなタマネギ。暑さに強く、強健だが、国内生産はされていない。
*3 単一異種染色体添加系統シリーズ:シャロット由来の8種類の染色体をそれぞれ1本ずつ添加した一連のネギ系統。
 
 
   
図1:ネギ萎凋病の罹病個体       図2:シャロット
 
 
図3:シャロットとの第2染色体を添加したネギの染色体像、黄色がシャロット染色体、橙色がネギの染色体
 
 
図4:添加系統シリーズにおけるサポニン生合成遺伝子の発現量を示すヒートマップ
 
 
【論文題目】
題目:RNA-Sequencing-Based Transcriptome and Biochemical Analyses of Steroidal Saponin Pathway in a Complete set of Allium fistulosumA. cepa Monosomic Addition Lines
 
著者:Mostafa Abdelrahman, Magdi El-Sayed, Shusei Sato, Hideki Hirakawa, Shin-ichi Ito, Keisuke Tanaka, Yoko Mine, Nobuo Sugiyama, Yutaka Suzuki, Naoki Yamauchi, Masayoshi Shigyo
 
雑誌:PLoS ONE
DOI:10.1371/journal.pone.0181784
 
 
 
 

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
担当 佐藤 修正 (さとう しゅうせい)
電話番号:022-217-5688
Eメール:shuseis*m.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか(たかはし さやか)
電話番号:022-217-6193
Eメール:lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)