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研究

研究成果

研究

地下茎は葉の形を変えて地中を伸び進む ドクダミやイネ科の雑草がはびこる仕組みの一端を解明

地下茎は葉の形を変えて地中を伸び進む ドクダミやイネ科の雑草がはびこる仕組みの一端を解明

2020.01.17 08:30

発表のポイント

  • 地下や地表を横方向に伸びる茎は、葉身のない小さな葉をつけることで、土の中でも旺盛に伸び進めるための適応をしていることがわかった。
  • 横に伸びる茎をもつ植物は、共通して、BOP遺伝子を強く働かせることにより、葉身をもたない小さな葉を形成するという戦略をとっていることが明らかになった。
  • 横に伸びる茎の制御は、作物生産や雑草防除という観点から重要である。
 

概要

 ドクダミ、スギナ、イネ科雑草など、しぶとい雑草の多くは地下で伸びる茎(地下茎)を地中に這わせて旺盛に繁殖していますが、地下茎を成り立たせる仕組みは解明されていませんでした。東北大学大学院生命科学研究科の経塚淳子教授と鳥羽大陽助教(研究特任)のグループは、地下で伸びる茎(地下茎)や地表を横に伸びる茎(ほふく茎)につく葉は、葉身をもたない構造に特殊化しており、この性質は土の中を伸びるために重要であることを示しました。葉を特殊化するにあたっては、BLADE ONPETIOLE (BOP )遺伝子が種を超えて共通して関わっていることを明らかにしました。横に伸びる茎は多くの植物種で見られ、植物が成長範囲を広げるために有効な形質です。しかしその成長様式を制御する遺伝的なしくみはこれまで知られていませんでした。
 本研究成果は、1月16日(アメリカ東部時間)のCurrent Biology誌(電子版)に掲載されました。
本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)および文部科学省科学研究費補助金の支援を受けて行われました。
 

詳細な説明

 植物には、タケやイチゴのように、ひとつの個体が横方向に伸びる茎(ほふく茎)と上方に伸びる茎の両方をもつ種類があります(図1)。茎を横方向に延ばすことで、植物は成育域を大幅に拡大することができると同時に、茎が土の中を成長する(地下茎)ことにより寒さや乾燥などの悪環境を地下でやり過ごすことが可能となります。つまり地下茎性は、植物が旺盛に増殖するうえできわめてすぐれた成長様式であるといえます。ドクダミ、スギナ、イネ科雑草など、地下茎を地中に這わせているしぶとい雑草の多くが、まさにこの戦略を採用しています。
 地下茎は多くの植物に見られる成長様式ですが、これを成り立たせる仕組みはこれまであまり研究されていませんでした。本研究チームは、地下茎をもつイネの野生種、Oryza longistaminata(オリザ ロンギスタミナータ)の解析から、地下茎につく葉は、葉身をもたず、短い葉鞘だけからなることを見出しました(図2)。さらに以前の研究では、BOP(ボップ)が葉身の成長を抑え、葉鞘の成長を促進する働きをもつこと見出しています。O. longistaminataの地下茎では、BOPの働きが強くなっているため、地下茎の葉では葉身が成長しないことが明らかになりました(図3)。また、葉身が成長すると、地下茎の先端は十分な強度を発揮できず、地下を伸び進めないことが分かりました(図4)。ドクダミとシバの解析から、BOPの作用を調節することによる地下茎やほふく茎の葉を特殊化は、ドクダミとシバでも共通することが明らかとなりました。したがって、BOPは地下茎性を進化させる過程で共通して使われた遺伝子であったと考えられます。
 ジャガイモ、レンコン、芝など、地下茎やほふく系は作物生産やバイオマスにとしても重要であり、本研究の成果は、作物生産や雑草防除への寄与も期待される重要な研究成果です。
本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)および文部科学省科学研究費補助金の支援を受けて行われました。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
【論文情報】
 
題目:Suppression of leaf blade development by BLADE-ON-PETIOLE orthologs is a common strategy for underground rhizome growth
著者:Taiyo Toriba1, Hiroki Tokunaga, Kazuma Nagasawa, Fanyu Nie, Akiko Yoshida, Junko Kyozuka
雑誌:Current Biology

DOI:10.1016/j.cub.2019.11.055
 
 
 
 
 
 
【問い合わせ先】
<研究に関すること>
東北大学大学院生命科学研究科 
担当:経塚 淳子(きょうづか じゅんこ)
電話番号:022-217-6226
E-mail:junko.kyozuka.e4(at)tohoku.ac.jp
              
<報道に関すること>
東北大学大学院生命科学研究科
担当:高橋 さやか (たかはし さやか)
電話番号: 022-217-6193
E-mail: lifsci-pr(at)grp.tohoku.ac.jp