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研究

研究成果

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分裂期中心体の足場形成機構の解明 動物に広く保存された中心体形成のモデルを提唱

分裂期中心体の足場形成機構の解明 動物に広く保存された中心体形成のモデルを提唱

2022.06.03 13:00

発表のポイント

  • 動物細胞が細胞分裂期に入ると、細胞小器官である中心体に多くのタンパク質が集積して肥大化し(中心体成熟)、2つの中心体を両極とする紡錘体が形成されます。
  • 線虫を用いて、中心体の「足場(骨組み)」を形成するタンパク質の各領域の役割を解明し、中心体成熟のしくみの一端を明らかにしました。
  • ヒトにまで広く保存された中心体成熟のしくみの普遍性が示唆されました。
     

概要

 私たちの体は多くの細胞でできており、正しい時期に正しい向きで細胞分裂することが生物の発生にとって非常に重要です。中心体は、細胞分裂期に入ると多くのタンパク質が集積して肥大化し、染色体分配に必要な紡錘体の極となりますが(中心体成熟)、そのしくみの一部は不明なままでした。東北大学大学院生命科学研究科の大学院生 中條桃江、春田奈美博士、杉本亜砂子教授らのグループは、線虫Caenorhabditis elegansをモデルとして、中心体の足場(骨組み)を形成するタンパク質の解析により、中心体成熟のしくみの一端を明らかにしました。本研究によって、ヒトにまで広く保存された中心体成熟の普遍性が示唆されました。本研究成果は、4月20日発行のJournal of Cell Science誌(電子版)に掲載されました。
 

詳細な説明

 中心体は動物細胞の正常な細胞分裂の司令塔となる細胞小器官であり、その異常はがんや遺伝性小頭症などの疾患につながることが知られています。細胞分裂期に入ると、中心体のサイズが大きくなり微小管形成能が高まる中心体成熟という現象が起きます。このとき、中心体の中央部にある中心小体の周りに形成された「足場(骨組み)」に他の多くの中心体タンパク質が集まりますが、そのしくみの詳細は分かっていませんでした。東北大学大学院生命科学研究科の中條桃江、春田奈美博士、杉本亜砂子教授らのグループは、体長1 mmほどの線虫Caenorhabditis elegansを用いて、中心体足場タンパク質SPD-5には3つの重要な領域があることを見出しました。さらに、各領域間および中心小体タンパク質PCMD-1との間の結合様式がリン酸化依存的に変化することが中心体成熟に必要であることを発見しました(図)。この中心体成熟のしくみは、ヒトにまで広く動物に保存されている可能性が示唆されました。中心体成熟のしくみの理解が進んだことで、中心体関連疾患の理解や治療法の開発への寄与が期待されます。本研究は4月20日付でJournal of Cell Science誌に掲載されました。本研究は、科研費(JP15H04369、JP15K14503、JP16K07334、JP20K06616)、未来型医療創造卓越大学院プログラムの支援を受けて行われました。

図:中心体の足場タンパク質SPD-5のドメイン構造(上段)と、中心体足場形成機構のモデル(下段)
中心体タンパク質PCMD-1とCLドメインの直接結合を介してSPD-5は中心体にリクルートされ、PLK-1によるリン酸化修飾を受けてPReMドメインとPAドメインが結合し、中心体の足場を形成します。

 

【論文題目】
Momoe Nakajo, Hikaru Kano, Kenji Tsuyama, Nami Haruta* and Asako Sugimoto*
(* 共同責任著者) 
Centrosome maturation requires phosphorylation-mediated sequential domain interactions of SPD-5. J Cell Sci. 2022 Apr 15;135(8):jcs259025.
DOI: 10.1242/jcs.259025. 
 
 
 
【問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
担当 杉本 亜砂子 (すぎもと あさこ)
電話番号:022-217-6194
Eメール:asugimoto@tohoku.ac.jp

(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか (たかはし さやか)
電話番号: 022-217-6193
Eメール: lifsci-pr@grp.tohoku.ac.jp