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研究

研究成果

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世界初の脳活動の操作による霊長類うつ病モデル

世界初の脳活動の操作による霊長類うつ病モデル

2022.08.09 16:00

発表のポイント

  • うつ病の脳内メカニズムの理解や治療薬の開発のためには、その病態を的確に再現した動物モデルの作出が極めて重要である。
  • ヒトと同じ霊長類で、脳の構造・機能や、それに基づく認知・情動機能に共通性が高い、サルを用いた病態モデルの開発が望まれていた。
  • 本研究ではニホンザルを用い、脳活動の操作によって、霊長類に人工的にうつ病を発症させることに、世界に先駆けて成功した。(世界初の脳活動操作による霊長類うつ病モデル)
  • 本成果によって、うつ病の発症機序や病態の理解と、その予防と治療法の開発が進むことが期待される。実用的には、うつ病治療の新薬候補の評価のためのモデルとして注目されている。

概要

 うつ病は、気分が強く落ち込む、やる気が出ない、などを主な症状とする精神疾患で、活発な社会生活を送ることを脅かすものです。有病率が高く、社会的損失も大きいことから、いち早く克服しなければならない喫緊の問題と考えられています。これまで、うつ病の病態理解や新規治療法の開発を目的として、げっ歯類を用いた多くのうつ病モデルが考案され利用されてきましたが、より効果的に研究をすすめていくために、ヒトと同じ霊長類で、脳の構造・機能やそれに基づく認知・情動機能に共通性が高い、サルを用いたうつ病モデルの開発が期待されていました。東北大学大学院生命科学研究科の中村晋也助教・筒井健一郎教授らは、東京大学、昭和大学との共同研究チームと、サルを使った動物実験で、反復経頭蓋磁気刺激を使い、脳の活動を局所的に操作することによってサルに人工的にうつ病を発症させることに、世界に先駆けて成功しました。本研究によって、うつ病の発症機序や病態の理解と、その予防と治療法の開発が進むことが期待されます。実用的には、うつ病治療の新薬候補の評価のためのモデルとして注目されています。
 本研究成果は、Experimental Neurology誌 電子版に7 月7日に先行掲載されました。
 
 
 
実験の概要図
健常サルのMFC腹側部の神経活動を低頻度rTMSによって抑制すると、サルに抑うつ症状を引き起こす。さらに、抗うつ薬の投与によりその症状が改善する。
 
 

 
【論文情報】
Shinya Nakamura, Yodai Kishimoto, Masaki Sekino, Motoaki Nakamura, Ken-Ichiro Tsutsui. (2022) Depression induced by low-frequency repetitive transcranial magnetic stimulation to ventral medial frontal cortex in monkeys. Experimental Neurology
DOI:10.1016/j.expneurol.2022.114168
 
 
 
【問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
教授 筒井 健一郎 (つつい けんいちろう)
電話番号:022-217-5047
Eメール:tsutsui(at)tohoku.ac.jp
 
(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか (たかはし さやか)
電話番号:022-217-6193
Eメール:lifsci-pr(at)grp.tohoku.ac.jp