発表のポイント
- アミド結合注1は、生体分子や天然有機化合物、医薬品などの構造中に普遍的に存在する極めて重要な官能基である。
- アミド結合形成の方法論は数多く開発されてきたが、反応性の低い窒素求核剤注2とカルボン酸のone-pot法注3(one-pot縮合反応)は合成上困難であった。
- DMAPO/Boc2O反応条件注4を新たに見出し、これを応用することで反応性の低い窒素求核剤とカルボン酸の高効率化学選択的one-pot縮合反応の開発に成功した。
- 新たに見出した反応は、様々な基質に適応可能であり、穏和な条件下で効率よく進行する。そのため、創薬化学研究の貢献に大きく期待できる。
概要
アミド結合注1は、生体分子や天然有機化合物、医薬品などの構造中に普遍的に存在する極めて重要な官能基です。そのため、アミド結合形成のための方法論はこれまで数多く開発されてきました。しかしながら、インドールやカルバゾールなどの反応性の低い窒素求核剤注2とカルボン酸とのone-pot縮合反応注3による直接的なアミド結合形成反応の例は非常に稀です。
東北大学大学院生命科学研究科の梅原厚志助教と佐々木誠教授、志水颯真氏(修士課程学生)は、DMAPO/Boc2O反応条件注4を新たに見出し、これを応用することで反応性の低い窒素求核剤とカルボン酸の高効率化学選択的one-pot縮合反応の開発に成功しました。新たに見出した反応は、様々な基質に適応可能であり、穏和な条件下で効率よく進行します。そのため、創薬化学研究の貢献に大きく期待できます。
本研究成果は、2023年2月2日付で触媒化学の専門誌 ChemCatChem にオンライン掲載されました。
東北大学大学院生命科学研究科の梅原厚志助教と佐々木誠教授、志水颯真氏(修士課程学生)は、DMAPO/Boc2O反応条件注4を新たに見出し、これを応用することで反応性の低い窒素求核剤とカルボン酸の高効率化学選択的one-pot縮合反応の開発に成功しました。新たに見出した反応は、様々な基質に適応可能であり、穏和な条件下で効率よく進行します。そのため、創薬化学研究の貢献に大きく期待できます。
本研究成果は、2023年2月2日付で触媒化学の専門誌 ChemCatChem にオンライン掲載されました。
図. A: 従来の方法 B: 本研究
【用語説明】
注1 アミド結合: アミド結合は、ペプチドやタンパク質を始めとした生体分子の基礎となる他、医薬品や生理活性化合物にも頻出する重要な結合である。
注2 反応性の低い窒素求核剤: 具体的には、インドール、カルバゾール、ピロール、ピラゾール、ラクタム、オキサゾリジノン、アニリドを指す。これら化合物の窒素原子は、孤立電子対の非局在化により、中性条件では求核性が非常に低い。既存の縮合剤を用いる反応条件では通常、効率よく反応が進行しない。
注3 one-pot法: 複数の反応を一つの反応容器で行うこと。効率性の観点から望ましい方法である。本研究で開発した反応では、反応性の低い求核剤の求核的な活性化とカルボン酸の求電子的な活性化を一つのフラスコ内で同時に行っている。
注4 DMAPO/Boc2O反応条件: DMAPO = 4-ジメチルアミノピリジンN-オキシド、Boc2O = 二炭酸ジ-tert-ブチルの略。反応性の低い窒素求核剤とカルボン酸をone-potで簡便に結合させる新規の反応条件。これまでに、使用例は一例も無く、今回が世界で初めての報告である。
【論文情報】
Atsushi Umehara,* Soma Shimizu, Makoto Sasaki (2023) DMAPO/Boc2O-Mediated One-Pot Direct N-Acylation of Less Nucleophilic N-Heterocycles with Carboxylic Acids. ChemCatChem
DOI:10.1002/cctc.202201596
DOI:10.1002/cctc.202201596
【問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
担当 梅原 厚志(うめはら あつし)
電話番号: 022-217-6214
Eメール: atsushi.umehara.e3(at)tohoku.ac.jp
(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
担当 高橋 さやか(たかはし さやか)
電話番号: 022-217-6193
Eメール: lifsci-pr(at)grp.tohoku.ac.jp
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